政府は、赤沢亮正経済再生担当相が8月5日から9日にかけて9回目となる訪米を行い、日米関税交渉の詰めを行うと発表しました。主な目的は、日本車に対する関税を現在の27.5%から15%へと早期に引き下げるよう、米国側に大統領令の発出を求めることです。しかし、これまでの8回の訪米でも成果がはっきりと見えない中で、今回の“再訪”が何をもたらすのか、疑問の声も上がっています。
赤沢氏は出発前の記者会見で、自動車関税の引き下げはすでに日米間で合意済みであり、新たな交渉の対象ではないと強調しました。にもかかわらず、米国が発表した文書にはその合意内容が記載されておらず、赤沢氏は「事務的ミス」と説明しています。
トランプ大統領と赤沢大臣 ホワイトハウス提供
また、自動車への追加関税25%を12.5%に引き下げ、既存の2.5%と合わせて15%とすることで日米は合意していますが、肝心の実施時期は依然不明です。赤沢大臣は今回、ラトニック米商務長官らと面会し、大統領令の早期発出を「お願い」する予定とのことですが、前回同様「アポなし」での訪問とされており、9度目の訪米でようやく面会にこぎつけられるかどうかも不透明です。
加えて、7日から発動される「相互関税」に関連し、日本側は一部品目の税率が最大15%に引き上げられる点について「米側と認識を共有している」と説明しています。現場で混乱が生じないよう、今回の訪米でも“念押し”を行うとのことですが、そもそもこのような基本的確認を9回目の訪米でようやく行う姿勢に対し、交渉力の空回りを指摘する声もあります。
一方で、トランプ大統領は、日本からの5500億ドル(80兆円)に及ぶ投資について「野球選手の契約金のようなものだ。我々の資金だ」と述べ、自国の予算の一部のように扱っています。もはや「合意」とは名ばかりで、米国側の判断一つで関税が上下する状態です。
米政権は今後、四半期ごとに日本の投資実行状況を評価し、トランプ大統領が不満を示せば、自動車などに再び25%の関税を課す構えです。日本側は「実行」を迫られつつ、評価基準も条件も曖昧なまま、手探りの交渉を繰り返しています。
また、トランプ大統領は中国との通商協議にも「非常に合意に近い」との見解を示し、年内に習近平国家主席との会談を行う意向を明らかにしました。日本との交渉に割く関心がどれほどあるのかも見通せません。