極右党AfDが世論調査で支持率トップに:現政権への失望がドイツを動かす

とうとうその時を迎えた、といった感じがする。ドイツ野党第1党で極右政党「ドイツのために選択肢」(AfD)が世論調査の支持率で与党第1党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)を抜いて第1党に躍り出たのだ。

ドイツ民間放送RTLとニュース専門局NTVは12日、世論調査機関「Forsa」に依頼し、メルツ政権発足100日を迎えて、国民の評価などを聞いた「トレンドバロメーター」の結果を報道した。調査期間は8月5日~11日の間、2505人に質問した。

AfDが政党支持率でトップに躍進、ドイツ民間放送ニュース専門局Ntvから、2025年8月12日

CDU/CSUと社会民主党(SPD)の連立から成るメルツ政権は今月14日で100日目を迎えたが、Forsaの調査によると、両党合わせて支持率は37%に過ぎない。過半数から程遠い。また、メルツ首相の活動に対する満足度は5月の首相選挙以来最低を記録している。

調査によると、CDU/CSUの支持率は24%に低下し、SPDの支持率は先週と同じく13%だ。一方、AfDは4月と同じく26%であり、CDU/CSUの支持率を2ポイント上回っている。そのほか、環境政党「緑の党」はSPDと同様13%、左翼党は11%(1ポイント下落)だ。自由民主党(FDP)(3%)、サラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)(4%)、それ以外の政党(6%)は横ばいだ。

その結果、AfDがドイツ連邦議会に議席を有する政党の中で最も高い支持率を得ていることになる。ちなみに、AfDは、ドイツ連邦憲法擁護庁(BfV)が5月2日、右翼過激派に分類した政党だ。BfVの内部資料によると、同党が自由民主主義の基本秩序に反する活動を行っているとの疑惑が確認されたというのだ。

一方、メルツ首相への支持率も大幅に低下し、過去最低を記録した。首相の職務に満足していると回答した人はわずか29%(3ポイント減)に留まった。これは5月の首相選挙以来最悪の結果だ。また、首相の職務に対する不満は前週比3ポイント上昇し、67%となった。

メルツ首相の職務に満足しているのは、CDUとCSU)の支持者のみ。しかし、同党支持者でも満足していると回答した人の割合は前週の76%から72%に4ポイント低下している。SPDの支持者では、60%と過半数が依然として首相の職務に不満を抱いている。また、AfD支持者の間では、ほぼ全員(95%)がメルツ首相の職務に不満を抱いている。

また、回答者のわずか14%が、「ドイツの経済状況の改善」を予想しており、これは前週より4ポイント減少。今年に入ってからの最低の数字だ。悪化を予想する人は逆に62%と急増している。経済状況に変化はないと予想する人は22%だ。また、CDU/CSUとSPDの現連立政権が、2029年春の議会会期終了まで続くと予想しているのは、調査対象者のわずか半数強(52%)に過ぎない。43%は連立政権が早期に崩壊すると考えている。

なお、ドイツの国民経済は3年連続、リセッション(景気後退)だ。トランプ米政権の関税政策もあって、欧州の輸出大国のドイツ産業の見通しは明るくはない。今年2月の早期総選挙では国民経済の立て直しを期待して多くのドイツ国民はメルツ氏に票を投じたが、現時点では期待外れ、といった感じが強まっているわけだ。現連立政権への失望が野党第1党のAfDへの支持率アップにつながっていることは間違いない。

参考までに、参議院選挙で「日本人ファースト」を標榜し、議席を増加した参政党の神谷宗幣代表は5日、AfDのクルパラ共同党首と国会内で会談した、というニュースが流れてきた。神谷氏は会談後、「移民が増え過ぎた町を見てほしい」とクルパラ氏からドイツに招待されたことを明らかにし、来月の訪独を検討する考えを示したという。

神谷宗幣氏Xより

神谷代表には、AfDが如何なる政党かを学習されてから訪独されることを勧めたい。例えば、AfDの思想的指導者、テューリンゲン州の代表,ビュルン・ヘッケ氏は、ホロコーストやナチス時代の罪を軽視または否定する歴史修正主義者であり、極右思想の中核にある「民族的純粋性」や「国家主義」に通じる思想の持主だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年8月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。