中国と韓国発の対日関係不安感:「いいように利用されている」石破首相

お盆休みを利用した登山だったのでしょうか、羅臼岳でクマに襲われる友人を目にした方にはつらいものがあったと思います。ここカナダもクマは多く、私もハイキングで何度か出くわしていますが、一度、子熊と3メートルぐらいのところでばったり出くわしたことがあります。親熊がそばにいることが多いのでじっと動かないでしばらくすると別のハイカー達がやってきてこちらが多勢になったこともあり、クマはすっと立ち去りました。日本では人里に降りてくるクマによる被害も増えているようですが、これも環境の変化なのでしょうか?食べ物は絶対に外に置かない癖をつけないとクマ被害の根絶には程遠いと思います。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

株価暴騰、皆さん、本当に儲かっている?

先週のこの項で上昇が続く日経平均株価について「あと1000円から2000円ぐらい上げてもおかしくない」と申し上げました。先週金曜日の終値が41820円で今週金曜日の終値が43378円、上げ幅1558円。でもこんな予想は自慢にもならず、どちらでもよいわけで、なぜ上がると思ったか、そこが大事なポイントです。巷では「お盆で薄商いになり、スルスル上がる」と言われていましたが、出来高の推移をみるとむしろ逆で8月に入ってから昨日まで出来高が20億株を下回った日は一度もないのです。7月あたりはせいぜい15-16億株程度でしたから活況と言ってよいのです。

ではなぜ?テーマ株の復活、それが主因だとみています。そしていみじくも少し前からソフトバンクGの活況ぶりを指摘していましたが、今や完全なる主役と言ってもよいでしょう。今週も休むことなく上げ続け、1か月でほぼ60%上昇です。そのソフトバンクGを押さえて売買代金トップはレーザーテック。往年の全員参加型銘柄の代表的存在であり、この銘柄が来ると株式市場は熱気を帯びるのです。一方、プライム市場の騰落率をみると実は株価が爆上げした日も爆下げした日も株価は全面高にも全面安にもなっていないのです。つまり特定の銘柄に資金が集中する傾向が強く出ているのです。

ここに来て三菱UFJなど銀行株が利上げ期待で活況になっているので躍進する銘柄が入れ替わる循環相場になるのか、夏の打ち上げ花火となるのか、ここの見極めが必要です。傍で見ている限り、祭りで踊りすぎの兆しは感じます。ところであまり聞かないかもしれませんが、「株価もインフレする」のです。世の中の物価と株価は正の関係であって「今、株価がなぜ上がるかわからない」という評論家の方がいましたが、日経平均の組成を含め、理由はいくらでもあるのです。ただ「踊りすぎにはご注意を」と申し上げておきます。

中国と韓国発の対日関係不安感

東アジアの外交関係には長年、興味を持ち続けている私としてはこのところ、気分が良くないのであります。対中国は石破氏のチームが中国寄りということで通商上の関係は維持されているものの習近平氏は特に今年9月3日の抗日戦争勝利記念日に熱意を持っているとされます。現在放映されている南京大虐殺を描く「南京写真館」も大ヒットのようです。中国でトップクラスの俳優が出演していることも手伝っているのでしょう。また映画のセリフの中で「(中国から見て日本が)友達だったことは一度もない」と述べている点に脚光が集まっているようです。

一方、韓国では李在明大統領は8月15日の演説で日本に対しては経済的関係を含め良好な関係にある点は認めたうえで歴史問題についてはくぎを刺しています。また慰安婦像問題で主導的立場ながらも寄付金横領などで有罪となっていた尹美香元議員らを特別恩赦するなど左派に対して融和的な政策をすると同時に北朝鮮には「触らぬ神に祟りなし」的なスタンスを貫くと述べています。

個人的にはしばらく落ち着いていた歴史問題に端を発する「問題提起」が再び起きかねない素地ができているように感じます。特に中国では「731部隊」の映画が9月に公開されるほか、それ以外にも同様の映画が続々公開される予定です。これらが海外に飛び火する公算もあり、私もカナダ内での動きに目を配らせています。私が気になるのは日本国内で保守的な動きが再びもたげはじめている中、石破首相も岩屋外務大臣も東アジア外交に対してあまり発信していないことです。歴史問題に対する政府の姿勢を見せないと相手方はつけあがることになるでしょう。石破氏は「いいように利用されている」と言われかねないと思います。

8月15日、千鳥ヶ淵戦没者墓苑を参拝した石破首相 首相官邸HPより

アメリカ ロシアサミットは NO DEAL!

こちらの報道では両首脳会議をサミット会議と称しているものも多くあります。つまりトップ同士の会談という意です。今日はその内容の一部でも漏れ聞こえてくるならそれをトピックにしようと思っていたのですが、これを書く日本時間の午前9時前にようやく、共同記者会見の様子が報じられ、「和平合意できず」(日経)でカナダやアメリカの報道もほぼ異口同音であります。トランプ氏が会談前にディールできない可能性も25%ぐらいあると言っていたのですが、その25%になっています。これは多くの専門家が「ディール上手のプーチン氏はそれほど簡単ではない」と述べていたのでその通りになったともいえます。

会議の流れは事前に何度か軌道修正されており、トランプ氏はウクライナの領土問題には触れないということになっていました。とはいえ、具体的にそれを言及しなくてもそれが頭にあるわけで相当意識した会議の展開だったと思います。今回の会議は「とっかかり」という位置づけにしているのでNo Dealであったとしても今後、数カ月の時間と数回の会議を展開できるきっかけになった可能性はあります。個人的に感じるのは今回、プーチン氏はトランプ氏を利用しようとし、トランプ氏はプーチン氏を利用しようとする双方が商魂ともいえるほどの下心を持った会議だったとみています。アメリカ、ロシアともカードゲームでいうエースと絵札を全部揃えたまさにサミット同士のガチンコ勝負であり、なかなか見られない高度な戦略を含む交渉が展開されたとみています。

アメリカとロシアがお互いに経済ディールの下地を作る余地はあったのではないか、とみています。トランプ氏は最終的に中国、ロシアと一定の距離感を保ちながらも取引可能な関係を作り上げたいのだとみています。もともと細かい外交が得手とは思えないトランプ氏にとってアメリカ、中国、ロシアがディールすれば世界の8割以上が影響力に於いてカバーされるわけで一種のパワーゲームの展開だろうとみています。よって私の予想はトランプ氏は次の習近平氏との直接交渉が案外決め手になるのではないかとみています。時期は10月にマレーシアで開催されるASEANの関連会議とみており、トランプ氏と習近平氏の参加が見込まれます。世界外交という点では非常に重要な秋を迎えそうです。

後記
久々にBC州内陸部の都市、ケロウナに行ってきました。同地はワインの産地でも有名で、著名ワイナリーに試飲に行くと「お1人様25㌦(約2800円)」。椅子に座って5種類のワインの試飲させてもらい、詳しい解説をしてくれます。更にワインを6本買えば試飲代は無料でワイナリーのメンバーシップがついてくるというマーケティングに完全にはまり、手のひらの上でころころされてしまいました。挙句の果てに2014年を最後に気候上の理由で作れなくなったアイスワインを「特別サービス」で試飲させてもらい、その味にクラクラとなり、私はイチコロ、約3万円分ほどのワインを買い込んでいました。蜂蜜のような濃厚なあのアイスワインは幻となるのかもしれません。

では今日はこのぐらいで


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。