トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領の米ロ首脳会談は15日午前(現地時間)、米アラスカ州のアンカレジのエルメンドルフ・リチャードソン米軍基地で開催された。会議は約3時間行われ、会合には、米国からルビオ国務長官、ウィトコフ中東担当特使、ロシア側はラブロフ外相、ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)が同席した3者会合となった。
アラスカの米ロ首脳会談 クレムリン公式サイトから 2025年8月15日
会議後の記者会見ではプーチン大統領が「会議は建設的だった」と語ると、トランプ氏も「非常に生産的な会議だった」と評価。同首脳会談の主要テーマであったウクライナの停戦問題では、トランプ氏は「一定の進展があった」と評価する一方、具体的な内容には言及しなかった。一方、プーチン氏は「ウクライナ問題を解決するためにはその根源がどこにあるかを理解しなければならない」と従来の主張を繰り返した。
トランプ氏は「プーチン氏との会議内容を北大西洋条約機構(NATO)やウクライナのゼレンスキー大統領に報告する」と述べた。記者会見最後に、プーチン氏は英語でトランプ氏をモスクワに招待すると申し出た。
首脳会談は3時間、記者会見は記者の質問には応じず、約12分間で終わった。その後、両首脳はそれぞれ大統領専用機に戻って帰途についた。昼食会は開かれなかった。
同首脳会談について、欧州のメディアは一様に「ウクライナの停戦問題では成果がなかった」と指摘。トランプ氏が自身の停戦案(領土の交換)などが話し合われたか否かも不明だ。一方、国際社会から孤立していたプーチン氏は米国の地で赤の絨毯を敷かれて迎えられたことで、世界に向かってロシアの存在をアピールするなど、プーチン氏の外交勝利となった。
そのうえ、第2回米ロ首脳会談をモスクワで開催する意向を記者会見で明らかにすることで、米国は対ロシア制裁の強化などの対策が実行できなくなる。米ロ首脳会談が継続している限り、ワシントンも対ロ制裁を強化することはないから、プーチン氏はウクライナ東部・南部のドネツク、ルハンスク、へルソン、サボリーシャの4州を完全占領する軍事攻勢を継続できるわけだ。
ドイツ民間放送ニュース専門局んnTVのウクライナ特派員は「アラスカの米ロ首脳首脳会談の行方を注視してきたウクライナ国民からは等しく失望の声が聞かれる」と報じていた。アラスカ首脳会談で最も失望したのはウクライナ国民だが、それに次いで停戦の実現を目指したトランプ氏だ、というわけだ。
次回の米ロ首脳会談はモスクワで開催されるが、その場にはゼレンスキー大統領は招かれないだろう。アラスカ、モスクワの2回の米ロ首脳会談が終わってから、第3回目以後にゼレンスキー大統領が参加することになるはずだ。それまでウクライナの停戦は実現せず、ロシア軍の激しい軍事攻勢が続くことになる。
なお、米ロ間の経済問題については明らかにされていないが、「トランプ氏はロシアとの間の地下資源開発など経済問題に強い関心がある」と言われているだけに、アンカラでも意見の交換があったのではないか。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年8月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。