米国では、いま大卒の若者が「就職氷河期」のような厳しい状況に直面しています。特にIT大手を中心に採用が冷え込み、さらに生成AIが新卒社員の仕事を代替し始めたことで、せっかく高いスキルを身につけても就職先を見つけにくくなっています。
コロナ禍以降、大卒者の失業率は労働人口全体より高くなり、その差は過去最大に広がりました。とりわけコンピューターサイエンスや工学を学んだ人の失業率は高く、これまで「就職に強い」とされてきた学位の価値が揺らいでいます。
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背景にはAIの急速な発達があり、プログラミングや定型業務といった新卒が担ってきた仕事の多くがAIで代替できるようになったことが大きいです。企業も経済や政策の不透明さから採用を控えており、新卒の雇用環境はさらに厳しくなっています。
こうした変化は大学の存在意義にも影響しています。かつては高い授業料を払って学位を得れば、高給や安定した職に結びつくと考えられてきましたが、いまではその保証が崩れつつあります。
ただし、すべての仕事がAIに置き換わるわけではありません。経験や判断が必要な暗黙知に基づくスキルはAIが完全に代替できず、建築の施工管理や大工、ロボティクス開発などの分野ではむしろ人手不足が目立ちます。
一方、日本では中高年の雇用を守る仕組みが強いため、AIで置き換え可能な中高年ホワイトカラーが解雇されにくく、その分、新卒採用が抑えられる傾向があります。結果として、日本の若者は米国以上に厳しい就職環境に直面する恐れがあります。
企業は新卒採用をリスクとみなし、非正規雇用に切り替える可能性が高いのです。さらに日本はAIの活用度や計算能力でも主要国に大きく遅れをとっており、この遅れが競争力低下を加速させる危険性もあります。
つまり、これからの時代を生き抜くためには、AIに代替されにくい分野を見極め、人間にしかできないスキルや経験を磨くことがますます重要になっているのです。