私はフィナンシャルアドバイザーではないので気をつけて書かねばならないのですが、多くの投資家が市場は「こうなる」「あぁなる」と予想するように私もそれなりに考えを張り巡らせています。お金に汗をかいてもらうはずが、冷や汗が出たというのでは話になりません。そのあたりも含め、秋の相場について私の個人的見解を述べたいと思います。
まず、明日、予定されているジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演です。ニュース報道などではこの講演でパウエル氏が金利動向についてヒントを提示するのではないかと奇妙な期待感で盛り上がっています。私はたぶん、肩透かしになると思っています。理由は毎年、ジャクソンホールでパウエル氏が期待に沿った発言をしたことがほぼないのです。ジャクソンホール会議は経済学者がより学術的な会議をする場であり、個別の金融政策についてどうこうする場ではないのです。よって私はヒントすらないだろうとみています。
市場の一部は失望するかもしれませんが、私が指摘することはたぶん7割の市場関係者は既にわかっていることで一部のリテール投資家(一般投資家)が安っぽいメディア記事に踊らされているのだろうと思います。
ではお前は何に注目するのか、といえば次のアメリカの雇用統計(9月5日発表)であります。今月初めに散々な雇用統計を発表し、統計局長が解任されたあと、新局長の対応を含め、どのような統計結果を提示するのかが最大の関心ごとです。私の予想は「弱々しい」数字が継続するように感じています。
とすれば9月16-17日に開催されるFOMCで利下げはありえるかもしれません。現時点で利下げをしない理由を見出すとすれば雇用統計が大きく改善、8月29日発表のPCE(米国個人消費支出)や9月11日のCPI(消費者物価指数)が想定をかなり超える数字となる、関税の影響がまだ分からない、パウエル氏が頑なになるのどれかですが私が数字を見ている限り、統計上の大きなサプライズはないと見ています。ただ、仮に利下げをしたとしてもその時点では既に株価が織り込んでいる可能性があり、キーはFOMC後の記者会見でパウエル氏が先行きをどう述べるか次第です。ただ、これも氏は今までほとんどヒントを出したことがなく、つまらない会見になるとみています。
統計局長が解任したトランプ大統領 ホワイトハウスXより
次に現在の相場を引っ張るAIと半導体です。実は私は半導体と資源は似ているところがあると見ています。それは相場が共にうねるのです。ということは例えば日本の半導体部品メーカーがこのところ先行き悲観の予想を出しているのですが、そろそろ底打ちしてもよいのではないかとみているのです。暗闇がずっと続くことはないのです。
私は資源株を長年手掛けていますが、石油なり鉄鉱石関連企業の株価が景気の循環のように数倍から場合により10倍のレンジで大きく動くのを経験値として知っています。一方、半導体にしろ資源にしろ製造コスト(掘削コスト)は年々上昇するため、うねりの下限は右上がりになりやすいという特性もあるのです。相場のうねりの底で買い、トップで売る癖をつけると失敗しにくいとも言えます。その中で半導体は確かに現時点ではあまり芳しいとは言えません。ただ、これはコロナ後のキャッチアップブームの余波が決算というタイムギャップで生じているもので、次のAI需要はまだこれからだとみています。
では目先の相場を引っ張るのは誰でしょうか?個人的にはフィンテック業界と昨日指摘したステーブルコイン関連とみてます。これにより世の中の絵図が激変する公算があります。銀行から送金業務が無くなり、金融再編が再度起きるかもしれません。ステーブルコインが世界で完全に成熟化した時、何が起きるかといえば為替と送金のコストと手間がなくなる革命であります。とすればセブンのATMは無用の機械になるし、基軸通貨ドルも怪しくなるのです。
もちろんそこに行きつくにはまだ相当の年月がかかると思いますが、AIが我々の社会にあっという間に浸透したようにステーブルコインの普及で皆さんの財布からPaypayもクレカも現金もなくっても驚きはしないでしょう。(これを言うとお前は大げさだというかもしれませんが、今、電車やバスに乗るのに現金で切符を買ったり料金箱に現金を入れる人はほとんどいない事実は忘れてはなりません。)
次に秋のグローバルマーケットです。まずアメリカですが、関税政策がボディーブローになり、経済は停滞するかもしれません。トランプ氏は年が明ければ中間選挙を意識せざるを得ず、態度が変わるでしょう。とすれば今年中に成果を出さねばならないのです。秋は焦りまくるトランプ氏を想像しています。
一方、このところ鳴りを潜めている中国ですが、すでに底打ち感は出ており、着実な回復を予想しています。中国株はこのところ極めて堅調で、一部で中国株再バブル化の声もありますが、個人消費が低迷する中、株のミニバブル化は悪くはないのであります。習近平氏が共産党内での勢力争いで一時期の勢いがなくなれば逆説的に元気が出やすい相場環境とも言えます。インドのモディ首相との会談も月末に予定されていますが、雪解け演出のため、王毅外相がインドで下地を作っています。このあたりは世界経済にはプラスに働くはずです。
不安材料としてはウクライナの行方がありますが、個人的には激変はないと見ています。イスラエルの動向は9月に国連でパレスチナ承認をめぐり、国際世論がどう形成されるのかが着目されますが、これも相場への影響は限定的でしょう。
相場への影響が最も大きいこと、これは誰も知らないあっと驚く何かが起きることです。つまり誰もわからないのだから私にもわかりません。これが不思議と秋には起きやすいということです。理由は夏の間、見ないふりをしていたのでしわ寄せが一気に来る、というのが私なりの解釈です。
ではお前は何に投資をするのか、と言われるとこのところ進めていた配当株へのシフトは完了したので次に入れ替え戦を考えています。一応、王道の金の発掘会社、世界の需要回復で鉄鉱石といった地味な銘柄です。石油は動きが難しく、小刻みで丁寧な売買をします。このところ、北米のREITが悪くなく、一般銘柄が上がらないので投資家がリスクヘッジをしている様子が窺えます。またヘルス分野は派手さはないですが、高齢化社会を迎える中、フォローの風が吹くと思います。ただ、現金比率はやや高めに維持し、緊急対応できるようにしたいと考えています。
くれぐれも投資は個人の責任で。また北米と日本は別次元の前提条件もありますのでそこもよく勘案する必要がありそうです。特に政治がらみはまだ予想すら難しいところです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月22日の記事より転載させていただきました。