フランスのフランソワ・バイル首相は、43.8億ユーロに及ぶ大規模な予算削減案をめぐる議会との対立を受け、突如として自身への信任投票を求める方針を発表しました。投票は9月8日に国民議会で行われる予定で、エマニュエル・マクロン大統領との協議を経て決定されたものです。
バイル首相率いる少数与党は、財政再建を急ぐ中で議会の支持を得られるかが焦点となっていますが、現時点では不信任に傾く可能性が高いと見られています。仮に信任を得られなければ、政権は崩壊し、再選挙や新政権の発足が避けられない状況となります。
この政局不安を受けて、フランスの金融市場は大きく揺れ動いています。ロイター通信の報道によると、主要株価指数であるCAC40は直近で約2%下落し、銀行大手のBNPパリバとソシエテ・ジェネラルはそれぞれ6%以上の急落を記録しました。さらに、フランスの10年物国債利回りは約4ベーシスポイント上昇し、3月以来の高水準となる3.53%に達しています。市場では「借入コストの急上昇が、国の財政運営に深刻な影響を与える」との懸念が広がっています。
フランスの政府債務はGDP比で115%に達しており、他の主要国と比較しても高水準です。こうした状況を受けて、「IMFによる救済が必要になる可能性も否定できない」との声も上がり始めています。
米保守系紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、「France Heads for a Fiscal Crackup(フランスは財政崩壊へ向かっている)」と警告を発しています。
フランスの失業率は依然として高く、経済の生産的な部分は、昨年GDPの51.4%を収入として吸い上げた福祉国家の下で圧迫されています。それでも政治家たちは、経済改革よりも連続する政治的危機を好みます。
政権交代が起きたとしても、予算案が可決される保証はなく、フランスの内政はさらに混迷を深める恐れがあります。インフレが進行する中で、積極財政を掲げる政党が多数派を占める日本にとっても、フランスの混乱は他山の石とすべき事例です。財政規律と国民の理解をいかに両立させるか――欧州の一角で起きているこの危機は、世界各国にとっても重要な教訓となるでしょう。
マクロン大統領インスタグラムより