S&P 500はDeepseekショック2

S&P 500は長い上ヒゲを引いた週足となった。週前半はじり高が続き6500に届いたが金曜にクラッシュしたのである。

前回の記事では「上値は6500前後のコールウォールが一旦抑えにかかるだろうが、もしコールウォールを超えられれば青天井となる」としていたが前半だけが実現した形となる。高値は6508であった。

注目されていた水曜8/27引け後NVDA決算ではガイダンスに中国売上げを含めなかったことで時間外は下落したが、意味のない議論であるだけでなく、下げ幅が6%に届かなかったことで反発し、木曜8/28NY市場も小動きで終わった。決算を受けてウォール街は相次いで目標株価を引き上げたが、そちらにも反応が薄かった。

金曜8/29は今度はアリババがAIチップを開発したとのヘッドラインでDeepseekショックを思い出すように半導体セクターが大きく売られ、S&P 500もナスダックほどでないものの下値を伸ばした。

GS CTAはピーク圏まで戻って来た。


DBのポジショニングもやはりシステマティック勢が92パーセンタイルまで来ており、一方で裁量勢は36パーセンタイルとなかなか全力を出さない。



自社株買いは毎年夏に多いと思われるが、今年もブラックアウトが明けても一旦落ち込むようである。


BofAの顧客別フローではコーポレートのバイバックがなぜか載っておらず、機関投資家の買い対HFの売りとなっている。

GSのプライムブローカー顧客は中途半端な水準までポジショニングを復元した後、復元もやめている。


今年は基本的にあまりシーズナリティが効いて来なかったが、とにかく9月はVIXが上昇しやすいシーズナリティとなる。


NAAIMは一進一退ながらも楽観域での推移が続く。9月1週目はマクロの週であり、月曜9/1はレイバーデーであり、9/2にはISM(フラッシュPMIが堅調なので多分良いだろう)、それが終わるとJOLTS、ADP、雇用統計が連日続く。

8月にミニ雇用統計ショックがあったことから9月の雇用統計は重要であり、これは強かったでアンチ・ゴルディロックスになりそうだし(どのように出ようと9月利下げが最終的には揺らぐことはまずないが、アンチ・ゴルディロックスな過程は想定できる)、弱すぎてもビハインド・ザ・カーブ懸念が噴き上がりそうなのでナローパスであるが、その分丸腰で突っ込む参加者も少ないだろうから、どちらかというと週が明ける途端にヘッジが入りはじめる可能性が高い(8月最終日もその色も強かったのではないか)。

それが十分に入った、つまり雇用統計を前に既に十分調整したところでようやく、短期的な雇用統計博打に意義が出て来るだろう。個人的にはこの週の指標がリセッショナリーに出るとは思っておらず、マクロで本当に鬼門になり得るのはちょうど3年前の9月にも暴落のきっかけになったCPI(9/11木曜発表)と思われる。

テクニカル。S&P 500の週足は辛うじて上ヒゲ陰線にならなかったが、ナスダックは週足上ヒゲ陰線となっている。そもそもジャクソンホール後のナスダックの反発は力強さに欠け、ナスダックは8月前半の高値も取り戻していない。従ってレジスタンスはS&P 500で見るよりもナスダックの21740がそれなりの強さを持つ。

S&P 500の6500近辺で何となく立っているコールウォールもレジスタンスになりやすいだろうが、高値の6508はせいぜい日足レジスタンスであり、週足サポートの6343は健在である。もっとも季節性の悪さもあって6343をトライしに来る可能性はそれなりにあるようにも見える。そのトライはナスダックが7月以降の斜めったヘッドアンドショルダーを完成させに行くことを意味し、ナスダックに限ってはそれなりに荒れても驚くべきではない。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年8月30日の記事を転載させていただきました。