2025年、日本の上場企業では人員削減の動きが加速しており、早期退職の募集人数はすでに1万人を超えて前年の通年実績を上回っているそうです。特に製造業を中心に40〜50代の管理職世代を対象とした大規模な削減が目立っているようです。
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背景には、米国による関税措置や中国経済の低迷といった景気の不透明感に加え、AIの導入による業務効率化が急速に進んでいることがあります。AIの普及は企業にとって大幅なコスト削減を可能にし、これまで「安定」と考えられてきたホワイトカラー職の雇用構造を根本から揺るがしています。
実際に米国ではすでに「AI氷河期」とも呼ばれる状況が生まれ、マイクロソフトやグーグルといった大手企業が相次いでホワイトカラー職を削減しています。
その影響で米国の大卒者の失業率は全体平均を上回り、特にコンピューターサイエンスや工学系の専攻者で高くなっています。生成AIが新人の業務を代替するようになったことで、これまで人気のあった職種でも雇用環境が急速に悪化しているのです。
日本もこの流れから無縁ではなく、近い将来同様の「就職氷河期」に直面する可能性が指摘されています。
一方で、日本は依然としてOECD諸国の中でも失業率が低く、2024年時点で2.6%と平均の4.9%を大きく下回っています。この低水準は治安の良さにもつながっており、「望まない仕事であっても仕事がある」という状況が犯罪抑止に寄与しているとされています。
ただし、低失業率の裏には「社内失業者」と呼ばれる十分に働いていない労働者が数百万人規模で存在するとの試算もあり、企業が人員の適正化に踏み切る一因ともなっています。
今後、日本企業は賃上げ圧力や固定費増大への対応を迫られ、特に給与水準が高い中高年管理職を中心としたリストラがさらに加速すると見込まれます。ホワイトカラー職はAIや自動化によって本格的に縮小が進む可能性が高く、従来の「会社に依存した安定的な働き方」は揺らぎつつあります。