8月の人事異動で福岡から愛知県に戻って来ました。
こちらに来てからもなにかとバタバタしていましたが、土日は時間ができたので久しぶりにドライブ。やってきたのは岐阜県揖斐川町です。
揖斐川町や隣の池田町などの西濃地方は揖斐茶と呼ばれるお茶の産地として知られています。山の斜面に茶畑が多くみられるのですが、今回向かったのは山上を切り開いて茶畑にした「岐阜のマチュピチュ」と言われる場所。それは揖斐川町の西部、滋賀県境の春日地区にあります。
県道からわき道に入るとすれ違い困難な狭い急勾配の道路を登っていくので、これから秘境に向かうんだと気分が高まっていきます。
山道を10分も走ると目的地に到着します。棚田など、険しい山間の田んぼや茶畑の見学場所は駐車場がないことも多く車の停め場所に苦労することが多いのですが、ここは5台程度の駐車スペースが用意されていて、売店や上の写真のようなカフェまであったりして、意外に観光向けに整備されています。嵐の櫻井翔さんらがテレビで紹介したことで知名度が上がってここを訪れる人は増えているようです。
駐車場に車を停めたら案内係の方が地図をくれました。手作り感満載でなんかいい。駐車場から散策路を抜けて絶景が見えるA地点までは15分くらいです。
畝が美しいやぶきた茶の畑
駐車場の周りもお茶畑。かつてここは養蚕が盛んだったのですが昭和35年ごろに高値で取引されるようになっていたお茶の生産に転換しました。過半は均一化して栽培しやすいように品種改良したやぶきた茶ですが、一部は古来茶とよばれる在来種のお茶も栽培されています。
ハート形茶畑に生産者の愛を感じます。
君が代で歌われる「さざれ石」。さざれ石とは小石が長い年月をかけて結合して岩のように大きくなる現象をいいますが、春日地区が春日村だった頃に村でさざれ石が発見されて以来、村は我こそが君が代のさざれ石発祥の地であると積極的にPRを行いました。今も春日地区内には「さざれ石公園」があるなどその名残を残しています。なお、この地が君が代のさざれ石発祥の地である歴史的根拠は現在のところ、何もありません。
さざれ石に別れを告げると山を開いた散策路を歩きます。この日は名古屋で40.0℃を記録した歴史的な日だったのですが、標高300メートルの山間部で日陰に入るとそこまで暑さは感じませんでした。日向はたまらない暑さでしたけどね。
手作りの地図にも載っていたなだらかAコースと急傾斜Bコースの分かれ道。見るからにこれはなだらかAコースに進んだ方がよさそうです。
なだらかAコースにはこのような休憩スペースもあります。散策路としてそれなりに整備してくれているので歩きやすいです。ここからはなだらかAコースも山道を登る階段になっていきます。展望所まであと少しです。
最終目的地、A地点の手前の展望所、B地点にやってきました。A地点のやや下に開けた展望所です。
下を見下ろせば山の中に広がる一面の茶畑。四方を山で囲われた中、ここだけ茶畑が広がっているその姿がペルーの空中都市、マチュピチュに似ていることからその名がつけられました。
さらに階段を登って、ゴールのA地点へ。山間を抜けてきましたがさすがに猛暑の中階段を登り、汗だくだくになります。
それでも眼下に広がる緑の絶景を眺めればその疲れも一気に吹き飛びます。
昭和中期、この山深い地域を桑畑から茶畑に変えるために汗を流してきた先人の苦労は計り知れません。
望遠レンズを眺めていると、モザイク状になっている茶畑がありました。これが古来茶の畑。
一般に茶畑はこのように直線の畝状に広がるのが特徴で、この幾何学的な模様のような美しさが観光客を魅了させるのですが、古来茶はこのようには育ちません。畝と畝の間を歩くのが大変で栽培しにくいため栽培をやめてしまう人が多いそうです。
山を下りてきて、駐車場まで戻りました。せっかくなのでここで取れたお茶を頂くことにします。ちょっと渋みはありますがさわやか。乾いた体を潤してくれました。
さらに車で山を下りて10分ほど走れば道の駅があります。「かすがモリモリ村」はお茶などの地域の農産物などをそろえるほか、温泉施設もあるので、マチュピチュの茶畑を散策した後体を癒すのに最適な場所です。薬草風呂や森林浴スペース(露天風呂だ!と思って外に出たら森林浴スペースでした)もありゆっくりと温泉を味わえます。幹線道路上にはない道の駅ですが、地元の人らしき人たちの憩いの場として賑わっていました。
岐阜県南部の山間に開かれた茶畑の絶景。近くを通ることがあればぜひ寄り道して訪ねてもらいたい場所です。ただし、県道からここに至る道は急だったり狭いところもありますので運転の苦手な方はご注意を。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年9月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。