開発が進むバンコク
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世界で規制が進む外国人の不動産購入
- シンガポールは、コンドミニアムを購入する外国人は最大60%の購入税を支払う必要があると明確に定めています。例えば、コンドミニアムの価格が4,000万バーツの場合、外国人はシンガポール政府に国の開発資金として2,400万バーツ(4,000万バーツの60%)を納付しなければなりません。一方、タイは国民の利益のためにこのような税金を徴収しておらず、徴収を検討したこともありません。
- マレーシアでは、特にクアラルンプール地域では外国人が住宅を購入できる最低価格が200万リンギット(7,400万円)に制限されているが、タイではそんな制限はなく、外国人は200万バーツという低価格でも住宅を購入できるのです。 その結果、外国人がタイ人と購入を競い合うことになり、価格が上昇しタイ人が住宅を購入することが難しくなります。最低価格を設定せずに外国人にコンドミニアムの購入を許可することは、タイ人の住宅購入を困難にさせるのです。
- GDPでタイの2倍の経済規模を持つインドネシアも、外国人の購入最低価格を約33万ドル(約5,000万円)に設定しています。
- オーストラリアでは、外国人は新築住宅のみ購入できると規定されています。中古住宅の購入は、オーストラリア人の権利を奪おうとする明らかな行為となるため、認められていません。
- ニュージーランドは外国人による不動産購入を禁止しました。彼らは、それが経済成長にプラスになることはないと考えています。しかし、これに不満を持つ住宅販売関係者だけは「国を売る」ことを呼びかけようとしていますが、ニュージーランド政府は企業の利益よりも公共の利益を重視しています。
- 韓国は、新たな許可制度を導入し、外国人住宅購入者への対策を強化し始めました。これは、韓国に居住していない富裕層外国人が投資目的で高級住宅を購入し、価格が高騰しているためです。 今後、外国人はソウルとその周辺地域で住宅を購入する際に政府の許可が必要になります。これは、不動産市場への外国資本の投機を抑制するための、不動産省によるこれまでで最大の取り組みとなります。 また、(ソウル、京畿道23市郡、仁川広域市7区)で住宅を購入する外国人は、購入日から4ヶ月以内に入居し、少なくとも2年間居住する必要があります。これに違反した場合、物件価格の最大10%の罰金が繰り返し課せられ、売買が取り消される可能性があります。 2024年末現在、中国人が保有する不動産物件数は56,301戸と第1位で、次いでアメリカ人が22,031戸、カナダ人が6,315戸、台湾人が3,360戸となっている。
- インドでは、外国人がインド国内の不動産を購入できるのは、非居住インド人および海外在住インド人からと規定されています。
- かつては外国人の不動産購入に極めてオープンだったアメリカ合衆国は、軍事基地周辺での購入を制限し始めており、特に中国からの購買力が極めて強いことから、一部の州でも規制の導入を検討し始めています。 アメリカ合衆国でさえ、国家安全保障上の脅威を懸念しているのですが、アメリカ合衆国は比較的高い土地建物税とキャピタルゲイン税を毎年課しています。
- カナダ連邦政府は、カナダにおける外国人の住宅所有禁止をさらに2年間(2027年まで)延長すると発表しました。これは、カナダ国民の住宅市場を維持し、外国人による住宅購入による住宅価格の高騰を防ぐためです。 カナダ政府は、カナダ国民の住宅が投機的な金融資産と化すことのないよう、全カナダ国民にとって住宅を手頃な価格にすることを約束しています。
- スペインは、EU域外居住者の住宅購入者に固定資産税の100%以上を負担させる一方で、新規開発物件の購入は免税とする新たな税制案を提示しました。住宅市場における投機圧力を抑制するのが目的です。
- オーストリアは、EU域外居住者は住宅購入許可を取得する必要があり、購入枠が設けられていて、中古住宅の購入も禁止されています。また、外国人による住宅購入を阻むため、外国人による住宅購入手続きが非常に複雑になっています。 さらに、欧州諸国では、外国人居住者に対する住宅購入税、相続税、キャピタルゲイン税、相続税も課せられています。
これはタイの大手不動産コンサルタントであるAREA(Agency for Real Estate Affairs)がタイの新聞に掲載したコラム記事ですが、世界では外国人(特に中国人)による大量の不動産購入で、自国民が住宅を買えなくなることを危惧した政府が、次々と規制強化を進めつつあることがわかります。
能天気なタイと日本
日本でも、外国人が日本で不動産を購入するのがあまりにも容易すぎると感じ始めていて、これが日本人自身の購買力に影響を与えていると考え始めてもいる(世界のどの国でも、政府は外国人に不動産を販売するビジネスマンの利益よりも、自国民の利益を優先する)。
また、日本でも住宅を購入する外国人が住宅価格を押し上げているが、日本の場合、特に「恐ろしい」購入者層は中国人であり、彼らは地方のマンションや空き家まで買い漁っているのである。
一方、これはAREAが日本の現状をタイという外の国から客観的に見た記述ですが、注目すべきは、日本の場合、特に中国人による不動産購入が危険、と彼らの目には映っているのです。
最近、東京や大阪では観光客相手の違法民泊について、行政が12の業者に対し1か月の業務停止命令を出したりと、やっと取締りを厳しくしつつあるようですが、この民泊経営者には住宅を買い取り、あの悪名高い「経営管理ビザ」を使って違法に儲けている中国人が多いとも聞いています。
また、違法民泊の問題は日本と同様にアジアの観光大国であるタイでも大きな問題となっていて、その多くが中国人家主による違法賃貸であり、結局、タイも日本も中国人に簡単に不動産を買わせるからこんなことになるわけです。
また、この記事からわかるのは、世界の他の国の場合でも主に中国人による不動産購入が問題の発端になっているのであり、中国政府が外国人による自国不動産の所有権購入を認めてないのに、中国人は外国で買い漁って問題を起こしているわけで、それなら対抗措置として世界各国も中国人の不動産購入を禁止するのが筋だと、筆者などは思うのですが…。
先進国は自国民ファースト
先進諸国は、外国人の不動産購入がその国の経済成長のプラスになるとは考えておらず、むしろ、一般市民や国家安全保障のことなど顧みないビジネスマンの懐が潤うだけと考えている。
こうやって見てみると、アジアではタイと日本だけが外国人による不動産購入に対する規制がほとんどなく、中国人による違法民泊などでやりたい放題にされているわけです。
一方、不動産デベロッパーや仲介業者は、自分の国を売ってでも自分たちが儲かればそれでいいというわけで、このままでは国民だけが割を食うことになります。
従って、これを厳しくコントロールするには、やはりタイも日本も他国と同様に政府が自国民ファーストの厳格な規制をすることが必須だと思うのですが…。