スペイン政権を蝕む麻薬マネー:欧州議会決議が突きつけた現実

2つの麻薬組織をテロ組織として認定

スペイン政府を構成する社会労働党(PSOE)と共産主義系政党スマール(Sumar)は、9月11日の欧州議会で、麻薬組織カルテル・デ・ロス・ソレス(Cartel de los Soles)およびカルテル・デル・ゴルフォ(Cartel del Golfo)を「テロ組織」として認定する決議に反対した。

しかし採決の結果は、賛成355票、反対173票、棄権15票となり、両組織をテロ組織と認定する議案は可決された(9月11日付「The Objective」より引用)。

この提案が議会に提出された背景には、近年南米コロンビアでテロ事件が相次いでいる現状がある。象徴的な事件として、大統領候補ミゲル・ウリベ氏が暗殺されたケースが挙げられる。報道によれば、この暗殺には上記2つの麻薬組織が関与したとされている。

なぜ社会労働党は認定に反対したのか

今回の採決で、与党PSOEが賛成に回らなかったのは不可解に見えるが、その理由は容易に想像できる。

カルテル・デ・ロス・ソレスからPSOEへ資金が流入しているとされるためである。現党首のサンチェス首相は社会主義インターナショナルの議長を務めるが、この地位に就いた背景には、ベネズエラのマドゥロ大統領からPSOEへの資金提供があったと指摘されている。しかも、その資金源はカルテル・デ・ロス・ソレスであるという見方がある。

こうした構図がある以上、PSOEがカルテル・デ・ロス・ソレスをテロ組織に認定することに抵抗するのは不思議ではない。

カルテル・デ・ロス・ソレスの首領はマドゥロ大統領

カルテル・デ・ロス・ソレスは、ベネズエラの軍人将校を中心に構成された麻薬組織であり、その実質的なリーダーがマドゥロ大統領だとされる。

この背景を踏まえれば、欧州議会で同組織をテロ組織と認定する動きに対し、恩恵を受けてきたPSOEが反対した理由は明白である。

マドゥロ氏とPSOEを結ぶ仲介役:サパテロ元首相

さらに問題を深刻にしているのは、スペインの元首相ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ氏の存在である。サパテロ氏は、マドゥロ大統領の国際的イメージ刷新を支援してきたとされ、その見返りとして多額の資金を受け取ったとの疑惑がある。事実、彼はこれまでに三つの邸宅を購入している。

米国政府はすでに、サパテロ氏がマドゥロ大統領と密接な関係を持つとして、米国入国ビザの無効化を検討している。調査の進展次第では、米国法廷への召喚が要請される可能性も指摘されている。

スペイン政府にとっての「国家の恥」

サパテロ氏だけでなく、現職のサンチェス首相自身も複数の疑惑を抱えている。首相夫人が5件の罪で起訴されているにもかかわらず、サンチェス氏は辞任せず、むしろ司法に圧力をかけて自陣に有利な展開を図っているとの批判がある。

こうした手法は、まさに「国家をマフィア化させている」との指摘を招いている。

麻薬資金を政治的権力の基盤とし、国際組織の要職にまで就いたサンチェス首相の行動は、民主国家スペインの信頼を大きく損なうものだ。