中野洋昌国交相は会見で、「国交省が配達員に自由にオートロックを開錠させる仕組みを導入する」とのSNS上の情報は事実無根と明言した。国交省がそのようなシステムを開発したり導入を支援する計画は一切ないと強調した。
この誤解の出発点は、読売新聞が「国交省がオートロック解錠の共通化を支援する」と報じた記事にある。その報道がSNSで拡散し、国交省がオートロック共通化を主導するかのような誤解が広がった。
置き配利用拡大の目的
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24年度の宅配便取扱個数は50億個超、再配達率は9.5%と高止まり。
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トラックドライバー不足や再配達の負担を減らすため、国交省は標準宅配便運送約款を改正して置き配ルールを明確化する方針。
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宅配事業者間で異なる伝票番号や配送データの共通化を支援し、置き配をしやすくする体制づくりを目指す。
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国交省の役割の限界
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民間ですでに存在する置き配システムの安全性向上や事業者間連携の促進を後押しするにとどまり、国がオートロック開錠システムを直接開発・導入する計画はない。
事実と異なる印象操作
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読売新聞は「国交省が配達員によるマンションのオートロック開錠共通化を支援」と報道し、国がシステム開発や導入を主導するかのような印象を与えた。
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国交省物流政策課は「国交省がシステムを開発・導入するものではない」と明確に否定し、「やや偏向報道である」と指摘。
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国交相の公式発言との乖離
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中野洋昌国交相は「防犯は大前提」であり、マンション管理組合などの合意がなければ導入されないと強調。
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報道はこの前提を十分に反映せず、あたかも国が一律に共通化を推進するかのように伝えている。
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相次ぐ「共連れ」事件
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神戸市では8月、24歳女性がオートロック付きマンションで殺害され、容疑者が住人の後に続く「共連れ」で侵入した。
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9月には東京都世田谷区でも同様の手口で殺人事件が発生。大阪や熊本でも性的暴行やつきまといの被害例あり。
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民間調査によれば、オートロック付きマンション住人の4人に1人が共連れ侵入を経験。
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住民・世論の反応
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ネット上には「オートロックの意味がなくなる」「宅配ボックス設置支援の方が現実的」との声が多数。
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「なぜ税金でマンション整備をするのか」と疑問を呈する声も。
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安全と利便性の両立
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国交省の立場
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防犯を最優先しつつ、民間システムの安全性向上と事業者間調整を支援するのが目的。
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具体的な安全基準や制度設計は今後検討される段階であり、現時点で共通化を強制する計画はない。
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課題と提言
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住民が安心して置き配を利用するには、宅配ボックス設置やセキュリティ強化などハード面の整備が重要。
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偏向的な報道に流されず、事実に基づいた冷静な議論が必要。
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読売新聞の「オートロック開錠共通化支援」報道は、国交省が直接システムを開発・導入するかのような誤解を広めてしまった可能性がある。国交省はあくまで防犯を大前提に、既存の民間システムの安全性向上と事業者連携を促す立場にとどまっており、政策の実態は報道が示したものとは異なる。