投資に必要なのは「垂直比較」ではなく「水平比較」

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国内不動産投資のセミナーに講師として出席すると、参加者の方からよく「都心部の不動産は高くなりすぎた」と言う声を聞きます。

確かに、東京や大阪、福岡といった首都圏の投資用不動産の価格を見ると5年前より3年前、そして3年前より今の方が高くなっています。

これは、同じ物件を過去と現在で比較したものであり、ワインに例えれば同じワインの異なるヴィンテージ(生産年)を比較する垂直テイスティングです。

これに対して、現在の不動産の価格や家賃を違うエリアと比較する方法もあります。これはワインに例えれば同じ年の違う地域のワインを比較する水平テイスティングです。

ワインは垂直テイスティングも水平テイスティングのどちらにも意味があると思いますが、投資の世界では垂直比較にはあまり意味があると思いません。

不動産価格が3年前より今が高いといったところで、3年前に戻って買う事はもうできないからです。

それより大切なのは、今と将来予想を比較して投資する価値があるかどうかを考えることです。そのために意味があるのが「水平比較」です。

「水平比較」とはこれは現時点の価格をグローバルに見て類似の投資対象と比較してみることです。

先週ロサンゼルスに不動産視察で出かけましたが、現地の投資用不動産はネット賃貸利回りが既に3%を割れていました。

東京の不動産をロスアンゼルスと水平比較すると割安と考えることができます。これはロスアンゼルス以外のアメリカや欧州の主要都市と比較しても同じ状況です。

過去と比べると高くなっていると思えば投資に消極的になりますが、他の都市と比べると割安と知れば投資に対する考え方は積極的に変わります。

この10年日本の都市部の不動産価格はずっと上昇を続けてきました。過去の価格と垂直比較ばかりしていた投資家はいつまで経っても買うことができずチャンスを逃してきたと思います。

これからでも遅くはありません。

投資に必要なのは「垂直比較」ではなく「水平比較」という良く考えれば当たり前の思考法に切り替えることで投資のチャンスを掴んでください。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年9月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。