カダフィの亡霊と推定100万人の犠牲者:プーチン氏が「後継者」に言及した理由

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、自身の「後継者」について異例の発言を行いました。これまで事実上の独裁体制を築いてきたプーチン氏が、将来的な権力移譲に触れるのは極めてまれなことです。

プーチン大統領 クレムリンHPより

その中で注目されたのが、「退役兵」が後を継ぐ可能性に言及した点です。プーチン氏がこのような発言をした背景には、長期化するロシア・ウクライナ戦争の影響が色濃く反映されています。

実際、今年6月にはイギリス国防省が、ロシア側の戦死者・負傷者の合計が100万人を超えた可能性があると指摘しました。特に昨年以降、ロシア軍の死者数はおよそ25万人にのぼると推定されており、これは社会にとっても国家にとっても極めて大きな損失です。

こうした中で、プーチン氏が軍関係者、特に退役軍人を後継候補とする発言をしたのは、国民への“戦争の代償”に対するある種の配慮とも受け取れます。軍人出身の人物であれば、戦争を正当化しつつ国民の不満を抑える象徴的存在になり得るからです。

とはいえ、プーチン氏自身がすぐに政権を退く気配は見られません。アメリカのトランプ前大統領が提唱する停戦仲介案にも耳を貸さない姿勢を続けており、戦争を継続する方針に変化はないようです。

また、仮に後継者を定めたとしても、プーチン氏が権力の座から完全に退くことは考えにくいでしょう。彼が強く意識しているとされるのが、かつてリビアを支配していたカダフィ大佐の悲惨な最期です。

そのため、後継者を表に立てながらも、実権は握り続け、「終身大統領」としての地位を維持しようとする動きが続くものと見られます。

戦争と犠牲、そして権力の行方——。プーチン政権の未来は、今まさに大きな岐路に立たされているのかもしれません。