日産自動車が横浜F・マリノスの株式売却を検討している。背景には、世界的な販売不振と6700億円を超える最終赤字という深刻な経営難がある。日産はマリノス株の約75%を保有しており、複数のIT大手や国内外の投資家に売却を打診している。1972年に創部された日産自動車サッカー部を源流に持つ同クラブは、Jリーグ開幕以来一度も降格していない名門で、リーグ優勝5回と天皇杯7回の実績を誇る。地域連携にも力を入れてきたが、今季は残留争いに苦しんでいる。
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日産は今年、シティー・フットボール・グループとのパートナーシップ契約を終了し、日産スタジアムの命名権料を年間1.5億円から5000万円への減額を横浜市に求めるなど、スポーツ関連事業の縮小を進めている。
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マリノスの昨年度売上は73.3億円で、スポンサー収入は27.6億円(約38%)。そのうち日産グループが約3分の1を担うとされ、親会社依存度は高い。クラブの純利益は900万円にとどまり、J1平均の約7000万円を大きく下回る。
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Jリーグの他クラブではメルカリや楽天、サイバーエージェントなどIT系企業が経営に参入しており、横浜F・マリノスにも大手IT企業やノジマなどが買い手候補として浮上している。一方でDeNAはJ3相模原を保有しており、規定上2クラブの同時保有はできない。
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クラブ名は変わらず、Jリーグの理念通り独立採算を目指す方針は維持される見通しだが、ファンの間には「身売り」という表現に反発もある。日産には、ヴェルディのように資金難から不透明な企業に渡る事態を避け、信頼できる企業へ引き継ぐ責任が求められる。
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横浜市の山中竹春市長は、クラブの地域連携やスタジアム活用を継続・発展させるため、市としても協力する考えを示している。
総じて、日産は経営再建を最優先するため本業への集中を図っており、長年支えてきたマリノスの株式売却はその象徴的な一歩となる。クラブが親会社依存から脱却し、健全な経営基盤を築けるかが今後の最大の課題である。
日産自動車HPより