黒坂岳央です。
昨今のメディアでは「若者の飲み会離れ」という特集が繰り返し報じられている。SNSでも「会社の飲み会は罰ゲーム」「仕事が終わったらしっかりプライベートを楽しみたい」と否定的な意見が見られる。
確かに若年層の飲酒率低下は統計的にも裏付けられている。だが、実際の調査結果を見れば、飲み会を最も敬遠しているのはむしろオジサン世代である。
Job総研、社会人男女を対象に実施した「2024年 忘年会意識調査」によると、20代の6割以上が「忘年会に参加したい」と答えた一方、40代・50代ではその割合が大きく下がっている。つまり「飲み会嫌い」の主役は本来、若者よりもオジサンなのだ。
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オジサンが飲み会を嫌う理由
その背景にはいくつかの要因がある。
第一に、オジサンが置かれた生活状況である。家庭や健康を優先する年代になれば、夜遅くまで酒席に付き合うことは体力的にも精神的にも負担が大きい。加えて、昨今は「オジサン叩き」と呼ばれる現象が広がっている。そうした風潮を目にしたオジサン本人も「嫌われる前提で臨む飲み会こそ罰ゲームだ」と感じ、ますます距離を置くことになる。
第二に、居場所の多様化である。かつてのオジサンの居場所は会社が中心だったが、いまや趣味や地域活動など自分の世界を持つオジサンも少なくない。会社の飲み会に執着せず、むしろ自分の好きなコミュニティで過ごしたい人は増えた。
会社の飲み会に好き好んで行きたい人、会社が居場所という人はかつてと比べてめっきり減ったのだ。
飲み会は「自由参加」ではなく「仕事」
本音では若者もオジサンも行きたがらない飲み会だが、現実として飲み会を完全に避けることは難しい。というのも取引先との接待や、業務の延長としての懇親会は仕事の一部だからだ。
名目上は「自由参加」とされることも多いが、実際には出席しないことが周囲に与える印象は非常に厳しくなる。「みんな本音では行きたくないのは同じ。一人だけ抜け駆けは許せない」となるのだ。
飲み会を避ければ、「仕事は飲み会ではなく、成果で評価してほしい」という理想は確かに実現する。だが、これが厳しい。仕事というのは自分では頑張っているつもりでも、会社や上司、取引先が期待する水準に到達しているかはまったく別の問題だ。
「社内の誰も異論はないほど抜群に仕事ができる」という評判があるなら飲み会はいかなくても何の問題もない。だが凡庸かちょっと出来る程度だと「仕事の結果」は非常に厳しい評価軸となる。日常の人間関係で得られる信頼や内申点の加算要素がゼロになるので、「同じ業績で飲み会に行く人」に相対的に負ける。
さらに、もっとリスキーなのはそのまま年齢を重ねることだ。中年以降のビジネスマンで飲み会で気遣いがわからない姿は、口に出されることはなくても致命的なダメージとなる。飲み会は実践訓練するしかないので、こうなると非常に難しくなる。だから飲み会は行きたいかどうかではなく、若い内に最低限の作法を身につけて自分の身を守るために行くものなのだ。
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飲み会は若者だけでなく、オジサンにとっても罰ゲームという感覚に近くなっていった。もはや飲み会自体が時代錯誤になったという人は多い。だが、それでも取引先などとの飲み会がセッティングされれば仕事として行くしかないのが現実なのだ。その時に気遣いが出来るかどうかは細かく見られるので、最低限振る舞いを覚えるまでは積極参加した方が良いだろう。