太陽光パネルのリサイクル、所有者の「努力義務化」で実効性がほぼゼロに

太陽光パネルのリサイクルが「所有者の努力義務」にとどまる方向となり、実効性が大きく疑問視されている。本来は有害物質を含む大量廃棄に備えて厳格な制度を整えるべきところ、政府の制度設計は後退を余儀なくされ、社会的なリスクは放置されたままである。

再生可能エネルギーの柱として急速に普及した太陽光発電は、不安定な供給や再エネ賦課金といった問題に加え、使用済みパネルの廃棄という深刻な課題が迫っている。パネルの寿命は20〜30年とされ、2012年の固定価格買い取り制度(FIT)導入を機に設置された膨大な設備が、2030年代以降に一斉に寿命を迎える。廃棄量は年間最大50万トンに達すると試算され、自動車や家電のリサイクル量に匹敵する規模になる。しかも多くのパネルには鉛やカドミウムなどの有害物質が含まれ、適切に処理しなければ環境汚染や不法投棄の温床となりかねない。

  • 太陽光パネルは2030年代以降、大量廃棄が始まり、環境負荷と処分場の逼迫が深刻化する見通しである。
  • 当初はメーカーや輸入業者にリサイクル費用を負担させる義務化を政府が構想したが、法制局が他のリサイクル法との整合性を問題視し、断念を余儀なくされた。
  • 現在浮上しているのは、所有者にリサイクルを「努力義務」として求め、大規模事業者には報告義務を課す案にすぎず、罰則もなく強制力は弱い。
  • リサイクル費用は埋め立ての4〜6倍と高額で、所有者任せでは回収が進まず、不法投棄や環境汚染につながるリスクが高い。
  • 熊本地震の際には大量のパネル廃棄が発生し、分別や保管に苦慮した事例もあり、制度不備が既に露見している。

太陽光発電は「環境にやさしいエネルギー」として盲目的に推進されてきたが、廃棄の段階で有害物質を含む大量の産業廃棄物を生み出すのでは、もともと怪しかった持続可能性は崩れ去る。努力義務にとどまる制度では、廃棄ラッシュを前に実効性が担保されず、将来世代に大きな負担を残すことになる。政府は罰則を伴う義務化と、安定的に費用を確保する仕組みを早急に整える必要がある。環境負荷を減らすはずの再生可能エネルギーが、負荷を減らすどころか新たな環境危機を引き起こす前に、いびつな電源構成の抜本的な見直しこそ急務である。

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