S&P 500は週間で再び上昇した。先週の記事では月末に向けて年金リバランスの株式売りが入る可能性を予想したものの、実際には火曜9/30引け際にファイザーが薬価引下げと関税減免でトランプ政権に達したとのヘッドラインで指数ごと上昇した。もっともその直後の水曜10/1アジア時間に米国は政府閉鎖に入り、時間外で米株先物は一度大きく売られた。
先週の記事では「正直遅れる分には別に問題ないのだが、不透明さとして嫌気される可能性もある」としていたがその展開は半日しか持たず、NY時間が始まると一度は前日安値近辺で神経質な値動きを見せたものの、半導体中心に大幅に上昇した。
過去の政府閉鎖期間でもS&P 500は堅調であった。懸念していた通り雇用統計もなくなったが、これについてはJOLTSとADPで概ね労働市場が「減速しつつあるが極端な急減速ではない」との結論が出ると、むしろ雇用統計に備えていたヘッジが不要になった。
それが政府閉鎖決定後の上値追いの背景の一つとして考えられたし、そう考えるとオーバーヘッジになったのは雇用統計予定日の金曜10/3までなので、このヘッジ解消も予定を過ぎれば必要なくなると想定され、現に金曜10/3はナスダックを中心に反落となった。
またFOMC後に様々な雑音も流れたものの、政府閉鎖中にFedがデータが見えない状態で10月利下げを止めるとも思われなかったため週前半はゴルディロックス的でもあり、金曜はそれも反転している。
DBのポジショニングは依然システマティック勢満タン、裁量勢中立の組合せが続く。裁量勢が上値を遅れて追い掛けて来るかどうかはともかく、下落局面では買ってくるだろう。一方で何かの拍子(1日2%下げ等)でシステマティック勢の売りをトリガーした場合の機械的な売り圧力は昨年冬以来となる。
システマティック勢が満タンなのはGS推測も同じである。指数の値動き自体は完全なじり高であり、リアライズドVolは低迷しているが、そのじり高が必ずしもシステマティックな買い(引け近辺の上値追い)の炙り出しに繋がっていないのは、システマティック勢のポジションが既に重いためである。
リアライズドVolが低迷しているのにインプライドVolがやや高止まりしている構図は、過去の経験からはまだ警戒が剥落する余地がある=volコントロールをはじめとするシステマティック勢が買う余地がある、という解釈になるが、いかんせんシステマティック勢のポジションが露骨に天井感を出してしまっている。
一方先週のような指数が高値を更新しながらVIXも堅調さを維持し続けた局面も珍しく、普段逆相関である指数とインプライドVolの相関がゼロ付近まで浮上してきた。これは指数の上下をコールの買いがある程度支配しているためと解釈され、現にコール出来高は絶対的に見ても(プットと)相対的に見てもかなり極まっている。
BofAのディーラーガンマプロファイルは、6400から6700にかけての一帯にポジティブガンマの高原が出きており、ある程度の急騰急落を吸収できる体制が続く。ある程度の調整に対しては、裁量投資家と合わせて吸収する側になるだろう(ただし万が一システマティック勢のちゃぶ台返しの勢いがガンマの高原を貫通したら6400より下ではサポートにならない)。
BofAの顧客フローは9/22の週はリテール以外が売りに回っていたことを示唆する。
夏中続いた予想EPS改善は決算期入りを前に止まってしまっており、ロールアップ込みでも直近横ばいとなっている。これは9月後半の指数上昇がほとんど純粋な金融相場であったことを示唆する。この体制でマグニフィセント7決算に突っ込むのはやや勇気がいる。またそれまでもブラックアウト期間が続く。
NAAIMは依然DBの裁量投資家ポジショニングと同様に盛り上がりに欠ける。これだけ見ると調整はあっても大したものとならないだろう。
テクニカル。今年これまでも何度かあったが金曜日足が高値更新しつつも上ヒゲ陰線となった。6750は日足レジスタンスとなる。週足は引続き6550サポートが健在である。もちろんバブルモードは続いており週が明けてあっさりレジスタンスがブレイクされる可能性もあるが、基本的に相場は短期的にそれなりに極まっていると考えられ、レバレッジをかけて追い掛けるには味方が多くない。
シーズナリティは味方とはいえ、直近の買い手は裁量投資家とリテールのコール買いしか思い付かず、裁量投資家が後から付いて来るかどうかに全てが掛かっているが、果たしてマグニフィセント7決算前に突っ込んでくるかどうか。
一方、バブルモードだからと言って初期に崩壊するとも限らず、システマティック勢の売りを誘うような急落でさえなければ、調整したところはまだまだ押し目買いで問題なさそうである。
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編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年10月5日の記事を転載させていただきました。