ショッピングモールのトイレで感じた「タイに抜かれた日本」

東南アジアの新興国には不動産視察によく出かけますが、日本との成熟度の違いを感じることがいくつかあります。

その1つがトイレです。日本は駅や商業施設にある公衆トイレもきれいに清掃されていて、気持ちよく使える場所が多くあります。

ところが新興国のトイレはお世辞にも綺麗とは言えず使うのが躊躇されることが多いのです。

今回コロナ禍以前に出かけてから久しぶりに訪問したタイのバンコクですが、ランチに出かけたモールでトイレに行って驚きました。

日本のこの手のトイレよりさらに清潔で、豪華な作りになっていたからです(写真)。悪臭なども一切ありません。

ここはバンコクの特別に高級な場所というわけではなく誰でも入れる一般的なモールです。

少なからぬ日本人は未だに東南アジアより日本の方が経済的にも文化的にも進んでいると思いこんでいます。

しかし、現実を見れば既にバンコクの人たちの生活の成熟度は、日本の地方都市を既に超えてしまっているように見えます。

不動産物件を視察していても同様の感覚を持ちました。バンコクの高級物件は建物の仕様や内装のクオリティが極めて高く、東京ではほとんど見ることができないようなハイレベルな物件がありました。

南国なので屋外プールがあるだけではなく、シェフを招けるパーティールームや出張エステができるエステルームまで完備しており、ジムやキッズルームも完備。エントランスの高い吹き抜けも日本ではほとんど見ることができないものでした。

今週は為替レートに大きな動きがあり、円は多くの通貨に対して更に値下がりしています。

これはタイバーツに対しても同じです。

日本円とタイバーツの交換レートは5年前には1バーツ=3円台前半だったのが、今や5円近くまでの円安となり、40%以上タイバーツが上昇しています。

日本人が優雅にタイで駐在やリタイヤ生活ができたのは過去の話。最近は現地の生活コストアップが賄えず帰国する人が増えて、タイに在留する日本人は減っています。また現地でも家賃の上昇から郊外へ転居する人が珍しくありません。

自分たちの後にいると思っていた東南アジアの国々が次々と日本を超えていく。タイの後ろにはフィリピン、ベトナム、カンボジアも控えています。

海外に来ると「日本の相対的な貧困化」を実感します。

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編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年10月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。