魑魅魍魎 政界は何処に向かうのか?:暗雲が漂ってきた高市首相就任

魑魅魍魎、今、日本の政界、そしてすべての政治家と国民がことの成り行きを見守っているように見えます。首相指名の臨時国会は後ずれしており、当初の10月15日頃から20日以降に変更になりそうです。28日頃にはトランプ氏が来日する予定も入っており、新首相はその直後、韓国で開催されるAPECで世界の首脳との華麗な外交舞台も待ち構えます。日程的にはドタバタだと思います。

高市早苗自民党新総裁 自民党HPより

その首相の座には高市氏が順当に収まるように見えましたが、やや暗雲が漂ってきているように見えます。

今週の日曜日にこのブログでは野党との確執はあるもののまずはお手並み拝見で、高市氏が首相に選ばれる可能性は高いと書かせていただきました。確かに日曜日の時点ではそうだったと思います。ですが、私は党幹部の人事の極端な偏りで寝たふりをしそうだった野党を起こしてしまったように感じるのです。正直、党幹部の人事について、私はヘタを打った気がします。

まず、今回の自民党の総裁選では候補者がほぼ異口同音に自民党の再生を訴え、そのためには一丸になるという姿勢を示しました。事実、高市氏もその方向です。ただ、総裁就任後、異様なほどだだ漏れの人事案情報はわざとリークさせ、党内と社会の反応を探っているのではないかと勘繰りたくなるほどでした。

出てきた党役員人事は麻生派の色彩が強く、高市氏は麻生氏に丸め込まれたようなそんな気配すらあります。高市氏の考えは党役員については高市カラーを打ち出し、リーダーシップを発揮するため、麻生色とし、首相になった暁には閣僚に党内の様々な方々をちりばめることで「バランス人事」を実行し、党の一体化を図るということではないかと思います。

しかし、そのやり方はもともとがバラバラとなっている自民党を一体化させるには小手先の算段でしかないと見ています。自民党には主流派や媚びる人に対して冷や飯を食わされる人との明暗、格差があまりにもひどく、うわべだけの党運営にしか見えないのです。

その上、当初から懸念されていたように高市氏の考えとは水と油の政党もある訳でその油に火を注いでしまうと仮に首相になっても国会運営は非常に厳しいものにならざるを得ません。

公明党は明らかに高市氏に距離感を持ちつつあり、首相指名選挙で違う名前を書く可能性もでてきています。高市氏と斉藤氏が会談し、高市氏が「3つの懸念のうち2つはご理解いただけた」と述べていましたが、はて、そんなに簡単な話だったのでしょうか?

ここでキーとなるのが立憲でありますが、安住幹事長が国民の榛葉幹事長と対談し、「野田氏にこだわっていない。玉木氏でどうだ?」とラブコールをしました。榛葉氏は「御冗談でしょう」という姿勢でしたが本心はまんざらでもないはずです。理由は玉木氏を首相に担ぎ上げれば政界の地図は全く変わり、キャスティングボードを握れるからです。

自民党総裁になっても首相にならないことはあるのです。過去、河野洋平氏と谷垣禎一氏がなっていません。特に谷垣氏は不幸でした。趣味の自転車で事故ってしまい、実質的に政治家人生が終わってしまったのです。2度あることは3度あるという言葉もあります。

10%ぐらい可能性が出てきた「玉木首相」となった場合、これは社会への影響も大きいかもしれません。まず、高市トレードの巻き返しがあり、株価では2000円程度の下落を想定します。為替は5円ぐらい円高になりそうです。逆にいうとこのような暗澹たる予想が出てくるとトレーダーたちの手は止まり、リスクヘッジに動きます。

ご承知の通り、日本の首相は国民が選ぶわけではありません。政党政治という仕組みの中で国民の声は超間接的に反映されます。そして今回の首相指名については近年まれに見るほどの混とんとした展開になり、これから10日から2週間程度、国会の内外で激しい綱引きが行なわれるはずです。そこを決めるのは実は高市氏というより野党、そして野田氏と安住氏がどれだけ工作するか次第だと言えます。

公明党を含め、他党が躊躇しているのは高市氏の手腕が未知数という点だとみています。主義主張はわかるのですが、それを実行できる能力がどれぐらいあるか、ここが見定められないことによる疑念だと思います。また高市氏が首相になった場合、世論は安倍氏が首相になった時と同様、大きく割れるとみています。安倍氏は強かったので論戦にもぶつかっていきましたが、高市氏の胆力がどこまであるのか、ここはわかりません。

言い換えると高市氏は自民党に一体感をもたらそうと画策しているかもしれませんが、国民世論を二分化させる可能性が否定できず、ここがしっくりしないということでしょう。

個人的には玉木氏が首相をするのは実務的に相当ハードルが高いと思います。よって今の盛り上がりムードを維持するためにも高市氏がこの10日を第2の総裁選選挙の如く、戦い抜かねばならないと見ています。高市氏は学究肌ですが、国会議員は腹黒く、本当に難しい人が多いのです。その荒波を乗り越えられるかどうかが一つの試金石とも言えそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月9日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。