黒坂岳央です。
野村総合研究所の資産階層ピラミッドによれば、金融資産1億円以上は「富裕層」に分類されることは広く知られている。
だが最近、SNSでは「いまや資産1億円は庶民でしかない」といった意見が増えた。確かに、円安とインフレが続くなかで「1億円で買えるもの」は変化している。東京では新築マンションの価格が1億円を軽く超えている現実がある。
だがこうした現実を踏まえて考えても、「資産1億円は今や大した資産ではない」という意見には違和感がある。この意見に反論したい。
masamasa3/iStock
場所で変わる「1億円」の価値
まず、「1億円では家すら買えない」というのは東京及び都市圏に限定した話であり、日本には色んな場所がある。
筆者が住む地方に目を向ければ、2000万円から土地付き戸建てが買えてしまうエリアもある。地元では外国人の不動産爆の買いもなく、外国人をほぼ見ない。
つまり、「1億円は金持ちか庶民か」という問いは、場所と文脈によって答えが違うのだ。だからまず、「今の日本は~」というのは主語が大きすぎる意見だと感じる。
確かに昨今、あらゆるものが値上げしている事実は地方でも変わることはない。だが、それでもなお、1億円というのは明らかに大金であり、全世帯の上位約3%という立場なのだ。
「1億円は庶民」というのは「上位3%は多数派」と言っているのと同じで、統計的な評価として妥当とは言えないだろう。
「1億円」の作り方
さらに「資産1億円」に達した人のほとんどは、そのままの資産でずっと静止することはあまり考えられない。多くの場合、さらに資産を増やすことが考えられる。
ここで資産を1億円に達する方法論を考慮すると、主に2パターン考えられる。1つはビジネス、もう1つは資産運用だ。ビジネスの場合は稼ぐ力が非常に強い。こういう人はどんどん事業展開をして稼ぎ続ける上、仕事そのものが楽しくてやっているので1億円に達したから仕事をやめる、という行動は考えにくい。仮にビジネスがコケて資産を失っても、彼らは何度でも再起する。生まれつき、そういう人種といっていい。
そしてもう1つの資産運用パターンだが、こちらは2パターンに分類できると思っている。1つは一般的な収入でコツコツ何十年も蓄財して老人になってから到達するパターン、そしてもう1つは稼ぎが大きくて30代、40代で到達するパターンである。
「1億円」は単なるスナップショット
どちらのパターンについても、資産は1億円で止まることはないだろう。
1億円も蓄財できる上位3%入りする人たちは、蓄財のコツを得ているのでそのまま2億、3億円とステップアップすると考えるのが自然だ。つまり、資産1億円は単なるスナップショットに過ぎず、多くはその後も資産を増やし続ける。特に資産運用による蓄財パターンはそうだ。
「たった1億円で調子に乗るな」という人たち自身も、昔は自分も通過点として1億円の壁を登ったはずだ。それと同じく、他の人も現在進行系でドンドン山を登り続ける。
さらに複利の力を考えると、0から1億円は10年、20年かけたという人でも、最近の好調な株式相場の波に乗って、1億から2億は5年前後、2億から3億は2-3年で割とあっという間に到達したという人もいるだろう。資産増加インパクトの力はそれほどまでに大きい。
もちろん今後はわからない。だが、インフレと円安が進行するほど、資産はずっと1億円で留まることはないだろう。
今後、円安、インフレしても生活費や商品サービスが今の3倍になることは考えにくく、さらにインフレヘッジ資産を有しているならむしろ、インフレは味方になるので一度、1億円の資産を作ったらそれを大きく減らさなければ強い。そうなると1億円の資産は庶民などではなく、潜在的な富裕層という見方が出来るのではないだろうか。
◇
「資産1億円は金持ちか庶民か」筆者からすると、この問い自体が時代錯誤に感じる。なぜなら、単なる通過点しか見ていないからだ。
そして資産運用で重要なのは、自分の人生丸ごとを考慮した資産設計だろう。人生は自分が主役であり、他人の資産は関係ないのだ。
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