自分の足を引っ張るのは、実は他人ではなく自分だった

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この本には、「ひとりビジネス」の専門家による、ビジネスを成功に導くための具体的なケースが盛り込まれている。本日はその一部を紹介する。

稼げるようになる「ひとりビジネス」成功の教科書』(高橋貴子 著)日本実業出版社

正直に告白する。私は「できない」という言葉が好きだ。

いや、「好き」というのは正確じゃない。「安全」なんだ。「できない」と言っておけば、期待されないから失敗しない。失敗しないから、傷つかない。これ、最高の防衛戦だと思いませんか?

周囲を見回すと、こういう人、山ほどいる。「私なんか、とても……」「才能がないので」「すでに優秀な人がいるし」。いつもこれだ。で、本人は言ってる。「自分、謙虚でしょ?」と。違う。それ、ただの逃げだ。怖いから、できないフリをしてるだけだ。

でもさ、誰が責められるだろう。社会が作った構図だから。成功した人には期待がかかり、批判も多い。失敗しようものなら、メディアもSNSも総叩きだ。そりゃあ、「できない」って言ってた方が楽。何も言われないから。

私自身も、そうだった。起業する前、「こんなの、大手企業がやってるし」とか「マーケティングの知識ないし」とか、理由づけが上手かった。得意技だった。でも、ふと気づいたんだ。その理由づけって、本当か?

違った。単に怖かったんだ。失敗が。責任が。自分がダメだって証明されるのが。

独立3年目に危機に陥った時——あの時ですね——初めて気づいたんだ。「できない」って言い張ってる間に、何ももたらされないんだ。当たり前だが。

コンサルタントの先生は言った。「あなたが成功することを、心のどこかで許可してないですね」と。ビンゴだった。成功したら、まわりから嫉妬される。家族に心配をかけるかもしれない。自分より優秀な人に申し訳ない——こんなバカなことを本気で考えてた。

無意識ってやつは、厄介だ。表面では「頑張ります」と言いながら、心の奥では「でも失敗するんだろう」と呟いてる。それが成功を邪魔する。自己実現の妨害者は、他人じゃなくて、自分なんだ。

だからね、一つ決めた。「稼ぐことは悪ではない」「成功してもいい」「豊かになってもいい」と、自分に許可を与えることにした。

これ、簡単に聞こえるけど、実は難しい。何十年も「できない」と言ってきた習慣を、一朝一夕に変えられないから。でも、意識することが大事なんだ。「あ、今、自分は無意識に自分を制限してる」って気づくだけで、違う。

話は変わるが、先週、起業志望の若い人と話をした。才能があるのに「自分、向いてないと思う」の一点張り。イライラしたね。本気で。こんな優秀な人がなぜ、と。でも、わかるんだ。その気持ち。怖いんだ。失敗が。

で、思ったんだ。世の中にいる「優秀だけど埋もれてる人」って、才能がないからじゃなくて、自分を許可できてないんじゃないか。「できない」という殻に、自分で籠ってるだけじゃないか。

逆に、「できる」と信じてる人——本当に才能があるかは別として——は、とにかく動く。失敗しても動く。なぜなら、「自分ならできる」と心が許可してるから。それが、結果の差になる。

あなたは、今、何に「できない」と言ってますか。それ、本当に「できない」のか。それとも「したくない」のか。いや、もっと正確に言えば「許可してない」のか。

心の奥に問いかけてみてほしい。もしかして、自分自身が、自分の足を引っ張ってないか、と。そこに気づけたら、多分、人生が変わる。大げさじゃなく。

※ここでは、本編のエピソードをコラムの形で編集し直しています。

尾藤 克之(コラムニスト、著述家)

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