トランプ大統領はSNS「Truth Social」で、中国の習近平国家主席との会談を「本当に素晴らしい」と自画自賛した。彼は「両国の間には深い敬意がある」と強調し、中国が大豆やソルガム(モロコシ)などの農産物を大量に購入することを「歴史的成果」としてアピールした。さらに、中国がレアアースや重要鉱物の供給を「自由で開かれた形で続ける」と述べたことも称賛し、フェンタニル問題への中国の協力を引き出したことも強調した。
トランプ大統領 Truth Socialより
私は中国の習近平国家主席と本当に素晴らしい会談を行った。
我々の両国の間には大きな敬意があり、今回の出来事によってその関係はさらに強化されるだろう。多くの事項について合意し、他の重要な課題についても解決に非常に近づいている。特に光栄だったのは、習主席が中国に対し、大規模な大豆、ソルガム(飼料用穀物)、およびその他の農産品の購入を開始することを正式に承認したという事実だ。これにより、我が国の農家は非常に喜ぶだろう!実際、私が第1期政権時代にも言ったように、農家の皆さんは今すぐもっと土地を買い、より大きなトラクターを購入すべきだ!この件について、習主席に深く感謝したい。さらに、中国はレアアース(希土類)、重要鉱物、磁石などの供給を、今後も開かれた形で自由に続けることにも同意した。そして極めて重要な点として、中国はフェンタニルが我が国に流入するのを阻止するため、米国と協力して全力を尽くすと明言した。中国は我々とともにフェンタニル危機の終結に取り組むだろう。また、中国は米国産エネルギーの購入プロセスを開始することにも合意した。実際、アラスカ州からの石油・ガスの購入に関して、非常に大規模な取引が成立する可能性がある。クリス・ライト氏、ダグ・バーガム氏、そして双方のエネルギーチームが、この取引を実現できるか協議を行う予定だ。本日達成された合意は、何百万人ものアメリカ国民に繁栄と安全をもたらすだろう。この歴史的なアジア訪問を終え、私はいまワシントンD.C.へ戻るところだ。寛大で、礼儀正しく、温かくもてなしてくれたマレーシア、日本、韓国に心から感謝する。また、昨夜イ・ジェミョン閣下(韓国大統領)が主催した夕食会に出席していたオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、シンガポール、タイ、ベトナムの皆さんにも感謝したい。これらの国々のおかげで、数千億ドル規模の投資が我が国にもたらされつつある。アメリカは今や再び強く、尊敬され、称賛される国となった。そして——「最高の時代は、これからだ!」
しかし、投稿の強気な文言とは裏腹に、今回の合意は実質的に米国が中国に譲歩した内容だった。中国は10月9日に発表したレアアース輸出規制を1年間凍結するだけにとどまり、恒久的な撤廃ではない。一方で米国は、フェンタニル関連製品に対する対中関税を20%から10%へ引き下げ、結果として中国製品全体の平均関税率をおよそ47%まで下げた。
つまり、トランプ大統領が「勝利」と讃えた今回の会談は、実際には中国の一時的な譲歩と引き換えに米国が恒常的な譲歩を与えた構図だ。レアアースの供給停止は米国の半導体・防衛産業にとって致命的なリスクであり、中国はそのカードを手放していない。1年後には再び同じ問題が再燃する可能性が高く、今回の合意は「時間稼ぎ」に過ぎない印象を拭えない。
さらに、農産品の購入約束もトランプ大統領が第一期政権時に交わした「フェーズ・ワン合意」と同様、実行率が低いまま終わる懸念が残る。中国は市場動向に応じて輸入を調整しており、トランプ大統領の発言どおり「農家が土地を買い、トラクターを増やす」ほどの需要拡大は見込めないだろう。
トランプ大統領は「米国は再び尊敬される国となった」と胸を張る。だが、今回の取引の実態を見れば、アメリカが中国に一歩譲り、圧力を緩めた形であることは明白である。中国側が求めていたのは時間であり、トランプ大統領はその時間を与えたに等しい。
トランプ大統領が演出する「勝者の物語」は、その虚勢の裏側ではきわめて脆いものがある。そして、かつて「取引の達人」を自称した大統領自身が、今回はその名に似つかわしくない不均衡な合意を結んだという印象が残る結果となった。
トランプ大統領と習国家主席 2025年10月30日 ホワイトハウスXより