トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」の投稿で、米国が「他のいかなる国よりも多くの核兵器を保有している」と強調したうえで、在任中に進めた核兵器の更新・改修を改めて主張し、今後5年以内に中国が追いつくだろうとの見通しを示した。さらに、トランプ大統領は「他国の核実験計画を踏まえ、国防総省に対し対等な立場での核実験開始を指示した」と明言し、「このプロセスは直ちに開始される」と述べた。
「その途方もない破壊力ゆえ、私はこれを実行することを嫌悪したが、選択の余地はなかった」との文言も付けられ、トランプ大統領自身が核武装強化の道を苦渋の決断として位置づけていることを示している。
米国は他のいかなる国よりも多くの核兵器を保有している。これは私の第一期政権下において、既存兵器の完全な更新・改修を含め達成された。その途方もない破壊力ゆえ、私はこれを実行することを嫌悪したが、選択の余地はなかった!ロシアが二位、中国は大きく離れて三位だが、5年以内に追いつくだろう。他国の核実験計画を踏まえ、私は国防総省に対し、対等な立場で我が国の核兵器実験を開始するよう指示した。このプロセスは直ちに開始される。本件へのご注目に感謝する!
ドナルド・J・トランプ大統領
今回の発言は、専門家が指摘する「第三の核の時代」の流れの中で捉える必要がある。
この「第三の核の時代」とは、2014年頃を境にそれまでの核軍縮や抑止の枠組みが徐々に崩れ、
① 主要国間の競争が再燃し、
② 軍縮協定や信頼醸成の仕組みが形骸化し、
③ サイバー攻撃、極超音速(ハイパーソニック)兵器、そしてAIの核システムへの統合
といった新たな脅威が顕在化した時代を指す。「核の無法時代」という表現の方が的確なのかもしれない。
こうした背景を踏まえると、トランプ氏の発言は、米国が核政策のさらなる強化へと舵を切る兆候とも受け取れる。
「第三の核の時代」という言葉は、それ以前の二つの時代的区分を踏まえている。第一の核の時代(1945〜1991)は、広島・長崎への原爆投下を起点に始まり、冷戦下の米ソ二極による抑止構造が世界秩序を支配した時代だ。相互確証破壊(MAD)の論理が安全保障の中核を占め、核戦争の危機と抑止のバランスが常に共存していた。
第二の核の時代(1991〜2014)は、冷戦終結後の多極化が進んだ時期であり、インド・パキスタン・北朝鮮など新たな核保有国が登場。核拡散とテロ組織による核リスクが懸念され、国際社会は不拡散体制(NPT)や核安全保障サミットなどを通じて管理と協調を模索した。
その後、2014年のクリミア併合を境に米露・中を中心とする大国間競争が再燃し、核軍縮条約の崩壊や新技術による不安定化が進行。こうして現在の「第三の核の時代」へと移行したとされる。
トランプ大統領の発言は、この第三期の傾向をさらに強化する可能性を示している。
核抑止の再構築を掲げつつも、核実験再開は国際的な軍縮秩序の信頼を大きく損なう恐れがある。サイバー攻撃やAI統合など、新たなリスク要因が複雑に絡み合う中で、誤算や誤警報による危機が現実化する危険性も高まっている。
トランプ大統領 ホワイトハウスXより