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結論から言う。転職できない人の口癖は決まっている。「なりたいんです」——これだ。
いや、わかる。私だって昔はそうだった。「アナウンサーになりたい」「作家になりたい」。でも「なりたい」って、要するに「なれてない」ってことだろう。願望を語ってる時点で、もう他人事なんだよ。
「逆転転職 未経験・異業種からでも選ばれる!共感ストーリー®戦略」(松下公子 著)WAVE出版
30歳でアナウンサーなんて無理、という常識
「経験がないから」「年齢的に遅すぎる」「周囲の反対が」——転職相談に来る人は、みんな同じことを言う。正直、聞き飽きた。
でも面白いのは、そういう人たちが実際に内定をもらったとき。「え、私が?」って驚くんだよ。いや、あなたが一番疑ってたじゃないですか、と。
私の生徒で、30歳の会社員がNHKキャスターになった人がいる。周りは「無理だよ」って止めた。本人だって半信半疑だった。でも、内定した。
お子さんがいるママもそう。「子どもがいるから」って、最初は諦めかけてた。でも、やっぱりNHKキャスターになった。
つまり何が言いたいかというと——限界を決めてるのは、いつだって自分なんだよね。
「私、IRになります」と言い切った女性
ある日、メールが来た。拙著『転職は話し方が9割』を読んでくれた女性読者から。
「先生の本に共感しました! 転職講座を受けたいのですが、今、募集してないんですよね?」
ちょうど募集してない時期だった。でも、この熱量。無視できなかった。
「30分だけなら」と返信して、オンラインで話を聞いた。
経理15年のベテラン。社内の数字を管理してきた。でも、「もっと外に向けて、企業の成長を伝えたい」と。IR(投資家向け広報)への転職を目指してた。
「でも、書類が通らないんです。面接に行けても、自信がなくて……」
ああ、またか。
「なりたい」と「なる」の、決定的な違い
私は単刀直入に言った。
「まずね、『なりたい』じゃなくて、『なる』と決めて」
彼女、ちょっとキョトンとしてた。「なる……ですか?」
「そう。人はね、一度決めたことに一貫性を持たせようとする。心理学的にも証明されてる。『なりたい』って言ってるうちは、まだ他人事。でも『私はIRになる』って決めた瞬間に、脳が動き出すんだよ」
しばらく沈黙があって。
「……私、IRの仕事をすると決めます」
彼女の目が変わった。マジで。画面越しでもわかった。そこから私、マシンガントークよ(笑)。履歴書の書き方、職務経歴書のポイント、全部伝えた。
「IRに必要なのは財務知識だけじゃない。プレゼン力、ストーリーで語る力。経理の経験をどう活かすか、そこを書けば印象変わるから」
彼女、必死にメモ取ってた。で、最後にこれ。
「あと、自分が話してるところ、動画で撮ってみて」
「え……動画、ですか?」
「そう。客観的に見ると、自分の癖がわかる。実はね、これやる人ってほとんどいないの。だからこそ差がつく。みんなやらないから」
「目から鱗です……やってみます!」
力強く頷いてた。この人、いけるな、と思った。
数週間後の、予想通りのメール
「松下先生、IRに転職できました!」
ほら、やっぱり。
「動画撮影して、自分の話し方もチェックして。おかげで自信を持って面接に臨めました」
知ってた。いや、知ってたっていうか、そうなるって信じてた。強く願って、行動し続ける人には、結果がついてくる。当たり前なんだよ、実は。
心理学では「コミットメントと一貫性の原理」って言う。人は一度「なる」と決めて公言すると、その決意に一貫性を持たせようと行動する。
難しく言ったけど、要するに「言った手前、やるしかない」ってこと(笑)。
だから、自分に問いかけてみて。
「私、本当にこの仕事やりたいの?」
答えが「YES」なら、それはもう憧れじゃない。欲望。欲望があるなら――もう、行動しかないでしょ。
「私はこの仕事をする」
そう決めた瞬間から、未来は動き出す。マジで(いや、これ精神論じゃないから。心理学的根拠あるから。念のため)。
※ ここでは、本編のエピソードをコラムの形で編集し直しています。
尾藤 克之(コラムニスト、著述家)
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22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)