日本の観光産業の未来は「地方の食」で決まる

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初めてフランスに出かける日本人の観光客はパリのエッフェル塔やルーブル美術館といったメジャーな観光スポットに出かけます。

しかし、来日2回目3回目となればパリ以外のボルドーやプロヴァンスといった地域に出かけるようになります。

それと同じように、日本に初来日した外国人は東京や京都に出かけますが、2回目3回目となれば他の地方都市にも行くようになるはずです。最近はインスタグラムなどのSNSを見て地方都市に来る外国人も珍しくなくなっています。

日本経済新聞電子版によれば、最近は東京や大阪、京都といったメジャーな観光地以外に外資系ホテルの開業予定が増えています。例えばハイアット系のアンダーズが2027年に広島市に開業。同じタイミングで高松市にマンダリン・オリエンタルもオープン予定です。

さらにワインで町おこしをしている北海道の余市にも高級温泉旅館の開業が予定されています。

これらのホテルの開業ラッシュは来日外国人観光客の訪問地分散の動きを先取りしたものと言えます。

しかし、宿泊施設を作っても肝心の観光資源が魅力的なものでなければ地方都市へのリピートは期待できず、いずれ飽きられてしまいます。

日本において観光客を惹きつける最大のコンテンツになり得るのが「食」だと思います。

最近読んだ柏原さんの「日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか?」には日本の地方にある美食レストランが紹介されています。

世界の富裕層はグルメを目的に日本各地を巡っているという現実が紹介されています。

食であれば、歴史的な建物も、雄大な大自然も必要ありません。地元の新鮮な食材とそれを最大限に活用できるシェフがいれば世界から人が集まってきます。

製造業が競争力を失った日本が生き残る道は、漫画やアニメのコンテンツかガストロノミーしかありません。

私も京都や大阪には良く出かけますが、それ以外の日本の地方に出かける機会はそれほど多くはありません。日本の地方の食にこれから大きな期待をすると共に自分自身ももっと自分が知らない日本の各地に出かけたいと思います。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。