コカ栽培を増加させるペトロ大統領
南米コロンビアは長年にわたり、ラテンアメリカで米国が最も信頼を寄せる国のひとつだった。しかし、左派で元ゲリラ組織M-19の戦闘員出身であるグスタボ・ペトロ氏が大統領に就任して以降、米国との関係は急速に悪化している。トランプ大統領は、30年にわたり続けてきたコロンビアへの経済支援を全面的に打ち切った。
その主因は、ペトロ大統領が米国の忠告を無視してコカ栽培を増加させていることにある。さらに、メキシコの麻薬組織がそれを買い付け、コカインとして米国に密輸する動きが拡大している。また、ペトロ大統領は隣国ベネズエラのマドゥロ大統領と結びつきを強め、同国の麻薬ルートを通じて米国への密輸を容認している疑惑も強まっている。
左派大統領の登場も改革は停滞
コロンビアでは長年にわたり右派政権が続いてきた。ペトロ氏はボゴタ市長を経て中央政界に進出し、貧富の格差是正や社会平等を掲げて政治改革を訴えた。2022年の大統領選挙では、これまで政治的に取り残されてきた貧困層の投票参加を促し、初の左派政権を誕生させた。
しかしその後、ペトロ氏の選挙資金がゲリラ組織や麻薬組織から提供されていた疑惑が発覚。長男のニコラス・ペトロ氏も組織から資金提供を受けていたことを自白した。加えて、コカ栽培を減らすどころか増加させている点について、米国は警告を強めていた。
警告を無視し続けた結果、米国は昨年から支援金の減額を開始し、最終的にトランプ大統領は全支援を打ち切る決定を下した。
米国による制裁とペトロ政権の窮地
支援停止に加え、米国はペトロ大統領に対する制裁を発動し、彼が米国内に所有する資産を凍結した。さらに、同様の疑惑に関与したとして、妻のベロニカ・アルコセル氏、長男ニコラス・ペトロ氏、大統領の参謀であるアルマンド・ベネデティ氏にも制裁が科された。彼らが50%以上保有する資産の凍結や、関連企業との取引禁止も併せて発表された。
米国はペトロ大統領の退陣を視野に
ペトロ政権は右派に議会を押さえられ、改革を進められない状況が続いている。そのうえ、米国の経済支援が途絶えたことで、政権運営はさらなる苦境に立たされている。米国は次期大統領選で右派候補を当選させるため、政治的圧力を強めていると見られる。