戸建てとマンション、どちらが良いかは賃貸VS持ち家論争と同じぐらい不毛かもしれません。双方、長短があるので個人のライフスタイルや価値観で判断するしかありません。ただし、生涯のコストと財産価値で見ると戸建てに分があると思います。
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本ブログではこの話題に関しては当初から戸建てが良いと言い続けてきたと思います。ここに来て日経が「『卒』タワマン、次に向かうは2億円建て売り タイパや割安感が魅力」というこれまた何とも言えない記事を掲載しており、うーんと思うのであります。私からすればセンスが違うんです。
戸建ての良さは広いこと、外へのアクセスが良いこと(地下やタワーパーキングに行かなくてよいし、散歩や買い物も玄関を出ればすぐに外です。)、目に見える所有する土地があること、メンテの費用が抑えられること、監視の目が少ないことがあります。
監視の目は便利な時もあるし、不便な時もあります。マンションの場合、ロビーから部屋までの動線が長いことがプラスにもなるしマイナスにもなるのです。たとえば少し前に神戸のマンションのエレベーターで若い女性が殺害された事件がありました。あれなどはマンションにおける部屋までの動線が長いことが災いしたとも言えます。
一方、外出しがちな方にはマンションのセキュリティは戸建てより優れていると思います。例えば出張が多い人、リタイア後、海外旅行に頻繁にいかれるような方にはマンションの方が優れています。
管理は俄然、マンションの方が有利です。多くの場合、管理人や管財会社が清掃をしてくれますし、植栽の剪定から建物の各種メンテまで全部お任せできます。ただし、それらは月々の管理料を払っているからであり、戸建てでも自分でやらず、他人にお願いすればなにがしかのお金はかかるのです。
たとえば私の東京の家は戸建てですが、日本に行くたびに植栽の剪定をしなくてはいけません。これが難儀で虫よけスプレーをかけても蚊に嫌というほど刺され、山のようになった剪定枝を4-5日放置して枯れて小さくなったところで90リットルのゴミ袋に小分けして通常ゴミとして出しています。業者にお願いした時は3万円でやって頂きましたが、自分でやっても2時間の作業なのでたいがいはいやいやながらも自分でやります。
マンションの場合、管理費と共に修繕積立金がありますが、昨今の建設物価の値上がりでたいていのマンションの修繕積立金はほとんどが実態に合わない状態になっていると思います。かといって急にそれを引き上げるのは住民の同意が取れず、マンションの維持という難問に直面するのです。マンションは初期入居の人たちが20年後もずっと住んでいることが多いものです。購入当時は収入というキャッシュフローがあったものの退職してストック(貯蓄)の切り崩しになると修繕費の値上げは至難の業であります。故に私は、マンションは仕組みとして欠陥があり、長期的展望に立つと機能しにくい不動産であると考えています。しかもそれは築30年ぐらいしないと気がつかないことも多いのです。
それから逃れるにはどうしたらよいかと言われればマンションを渡り歩き、なるべく築浅の物件に住み続けることです。それこそ10年に一度引っ越すぐらいのつもりでもよいと思います。
では日経の「2億円建売り」は本当にブームになるのか、です。私はないと思います。理由は戸建ての良さはカスタマイズできることにあるのです。なのに2億円の建売りを買う理由がタイパだというのです。これは酷いと思います。私の東京の家はその点では私がこだわった部分があり、基本は西洋式住宅の思想を取り入れています。玄関のダブルドア(両面開き)や石材で囲った電気式大型暖炉、ガラス越しに見える二階に上がる鉄の階段、リビングと同じ高さの張り出しテラスはほんの一例です。戸建てはその家の居住人数や用途に合わせることでどのようにでも作れます。一方、今の建設物価だととてつもない金額がかかるのでこだわるところと普通に抑えるところのメリハリが必要なのです。
ところが「2億円の建売り」のような高級物件の場合、外観、外構にお金をかけるケースが目立ちます。しかしながら買い手にしてみればいくら高級そうに見えて見栄を張れるとしても住宅の中身が機能的で文化的な居住空間でないと意味がないのです。故に私からすれば2億円もかけてもったいない、と思うのです。自分でそのあたりを考えてメリハリを考えて作れば半額とは言わないまでも3割はコストを削減できるのですから。
ところでタワマンで超高層からの眺望はいいだろう、と思われるでしょう。私はデベロッパーとして当地で約10数年にわたり短期間で様々なマンション(コンドミニアム)を渡り歩き、高さも地べたから33階、場所も海に面しているところから眺望がないところまで全部試しました。結論から言うと10階前後がベストです。理由はリビングのソファに座って外を見た時、景色が見える高さだからです。これが高層階になると立ち上がり、窓際に行かないと見えないのです。ソファーからは空しか見えないのです。私の中の眺望とは座った時に窓に目をやるとリアルの絵画だと考えています。私は今、こう書きながら窓を外を見ると木々が赤や黄色で染まり、美しい紅葉となり、季節を堪能することができます。
戸建てだと眺望はなかなか難しいかもしれません。よってどちらを選ぶかはその人の価値観次第であるのです。ただ、建売住宅は本当に面白くないと思います。ちょっとお金はかかるかもしれませんが、工務店と相談して作るのはアリだと思います。夢が広がりますよ。(但し、あまりこだわりすぎると後で売りにくくなるのでそこは要注意です。)
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年11月3日の記事より転載させていただきました。