高市人気と自民停滞をどう読むか?内閣と自民党支持率の相関①

首相官邸HPより

先日、アゴラの記事(11月4日)が目に留まった。

高市内閣の支持率82%でも自民は28%どまり:ねじれる国民感情

高市内閣の支持率82%でも自民は28%どまり:ねじれる国民感情
JNN(TBS)の11月1〜2日の世論調査で、高市内閣の支持率は82.0%と発足直後として2001年以降で2番目の高水準となった。一方で自民党の政党支持率は28.9%にとどまり、内閣人気と党勢の乖離が際立つ。 内閣支持率が82%で、な...

高市内閣は「個人の高支持」と「自民の伸び悩み」という相反する二重構造でスタートした。(中略)無党派41%台の厚みは、実行力の評価が揺らげば一気に逆回転するリスクでもある。

誠に妥当な論評である。まずは順調に“出港”した高市内閣だが、支持率という推進エネルギーをどう維持し続けるのだろうか。また自民党支持率をどう回復させて行くのだろうか。それらを踏まえて今後どのような“航跡”を描いて行くのかは、大いに気になるところである。

高市内閣は離れた自民支持層を呼び戻せるか

岸田内閣の途中から“自民離れ”(支持率の低下)は起きている。その退潮傾向は石破内閣になっても変えられなかった。高市内閣は、この離れて行った自民支持層を呼び戻すことができるのだろうか。

各種メディアや“識者”の論説にあたっても腑に落ちるものに出会えない。余りにも皮相的・近視眼的な見立てや支持・不支持の期待込みの主観的な主張が目立ち、政治的主張や活動からは距離を置く有識者の話がなかなか伝わってこないからである。

そこで筆者はこの解を求めて自分で調べることにした。すべては無理だとしても一定程度の解は求められると考える。それを読者諸賢と共有し、さらには応援している少数の政治家に伝えたいと考えたので、いくつかの記事に分けて論じて行きたい。

NHKの世論調査を活用

冒頭で注目したアゴラの記事ではJNN(TBS)の11月1〜2日の世論調査に基づき論を展開していたが、筆者は長期的な連続性を重視してNHKの世論調査を活用した。1998年の小渕政権以来の浮沈を長期的に俯瞰して行く。

NHK世論調査 内閣支持率 政党支持率 毎月の最新情報 | NHK選挙WEB

なお、2020年3月以前のデータはNHK放送文化研究所の月例調査のデータに基づく。

政治意識月例調査|NHK放送文化研究所

内閣と自民党の支持率散布図

今回、各内閣と自民党の支持率を二軸とした散布図を作成した。その理由は、“高市内閣は「個人の高支持」と「自民の伸び悩み」という相反する二重構造でスタートした”ので、この構造について歴代内閣のポジションを比較したかったからである。

例として、記憶に新しい石破前内閣の散布図を見ると次の通りである。

ここから何がわかるのか。まず石破内閣と自民党の支持率には強い相関関係があることがわかる(あくまで相関関係であって因果関係とは言えないことに注意が必要)。

しかし、実はこれだけではあまり有機的な情報は得られない。そのポジションが一体どんな意味を成しているのか、比較対象がないからである。

石破・安倍第二次以降内閣と自民党の支持率散布図

そこで、第二次安倍内閣のそれと比較する。

この比較からはかなり多くのメッセージが読み取れる。ここで重要なのは「内閣も自民党もその支持率は安倍時代と石破時代では別物である」という事実であろう。

まずポジションに殆ど重なりがない。次には、「自民党の支持率は、安倍時代の最も支持を落とした時期と石破時代の最も支持を得ていた時期でほぼ同水準」ということ、言い換えるなら「自民党支持率は、石破時代の天井でやっと安倍時代の大底に並べた」ということであろう。

しかしこれでも単なる比較に過ぎず、絶対的な意味は見えてこない。

そこで座標の原点を設定したい。

自民党と内閣の“巡航速度”

自民党の支持率の実力は何%程度なのだろうか。始点と終点を観測できるのは小渕内閣以降なのでその287か月分の平均をとると33.5%となった。

それでは同期間における内閣の支持率はどうか。同じく287か月分の平均は44%となった。

これら平均値を座標の原点としたいと考える。中央値の方が適切かとも考えたが実際には大差がなく、より広く親しまれている平均値を採用した。その座標軸を赤く表示したのが次の散布図となる。

ここから読み取れるのは、石破内閣はほぼ一貫して平均以下で同時期の自民党支持率も最初以外は平均以下である、という事実である。

これは結果論(後知恵)に過ぎないが石破総理が就任直後に打って出た衆議院解散の判断には、所与の条件とした自己認識と情勢判断に大きな誤りが存在していたと考えられる。自らの決断で受け取った「ご祝儀」の中身は皮肉にも「支持率の請求書」だった。

まとめ

初回は内閣と自民党の支持率に関する相関性とそのポジションの意味について読み解く視座を共有できたと考える。この視座で読み解くと、(今回は掲載していないが)歴代内閣の自民党支持率との相関性にはそれぞれの特色が出ており趣深い。

今まさにNHKの世論調査は実施されている頃だが、高市内閣も自民党もその支持率において最高のスタートを切ることを予想している。

特に次の2点に注目している。一つは内閣では小泉内閣の初回81%(2か月目85%)を超えるかどうかということ。もう一つは、(これまではある程度の相関性が見られた)自民党支持率も「小泉政権の初回30.4%」や「総平均の33.5%」を超えるなどJNN調査とは違う判定が出るのかどうかということである。

引き続きNHK世論調査に注目したい。

(つづく)