9日、トランプ米大統領が自身のSNS(トゥルースソーシャル)で「関税に反対する者は愚か者だ」と強調し、関税収入を原資に富裕層を除く大多数の米国民へ1人当たり2,000ドル(約30万円)の「関税配当」を支払う構想を示した。政策の実現性や法的根拠、物価への影響などをめぐって喧々諤々の議論が広がっている。
- 大統領はSNSで「People that are against Tariffs are FOOLS!(関税に反対する者は愚か者だ)」と投稿し、関税は米国を豊かにしインフレも招いていないと主張した。支給額は「少なくとも2,000ドル」で、高所得層は対象外とした。
- 財源は現行の関税収入と説明。直近の関税収入は2025年4〜10月で約1,510億ドル、年換算で5,000億ドル規模との見方も一部で示されたが、具体的な配分方法や時期は示されていない。
- ただし、家計への一律給付として実行するには議会承認が必要との見解が多く、共和党内にも慎重論がある。財務長官は「減税など別の形」での還元の可能性に言及したが、詳細は未定だ。
- 関税の合法性は現在連邦最高裁で審理中。大統領が非常時権限法(IEEPA)を根拠に広範囲の関税を一存で課してよいかが争点で、判決は2026年6月までに示される見通し。結論次第では徴収済み関税の扱いが問題化する可能性がある。
- 経済的影響をめぐっては、関税は物価を押し上げやすいとの警戒も根強い。有識者は「配当」構想の規模(総コスト3,000億〜5,000億ドル超の試算)に比べ、実際の関税収入が足りない可能性を指摘している。
- 一方、ホワイトハウスは関税を「国家安全保障と財源の双方に資する」と擁護し、国民への利益還元を示唆。株価や年金(401k)の好調も根拠として並べた。
- 市場・政策面では、関税収入の用途(国民配当か、国債削減か)をめぐる選択や、対象・給付方式(現金給付、減税、クレジット)など制度設計の現実性が焦点になる。
発信は強いメッセージ性で支持層の結集を狙う一方、実行段階では「議会承認」「最高裁審理」「家計・物価へのネット効果」という3つの関門が立ちはだかる。年内に制度設計の詳細や法的リスクの見取り図が示されるかが、2,000ドル(約30万円)の「関税配当」構想の現実味を左右する。
トランプ大統領 ホワイトハウスXより