東京商工リサーチの調査で、2025年1~10月の「人手不足倒産」は323件と過去最多を更新した。前年同期比30.7%増で、すでに2024年通年(292件)を上回った。だが、この数字を「危機」と見るのは誤りだ。長く続いた「延命経済」が終わり、市場がようやく呼吸を取り戻しつつある。
- 倒産件数の増加は、企業が人件費の上昇や採用難に耐えられなくなった結果だが、裏を返せば「無理に生き延びてきた企業」が整理され始めたということでもある。
- 日本経済新聞と東京商工リサーチの分析によれば、倒産リスクの高い「予備軍」は約1万3500社。これまで国の支援策やゼロゼロ融資によって生かされてきた企業が、徐々に市場から退出しつつある。
- 問題は倒産件数そのものではなく、退出が遅すぎたことだ。資源配分の転換が遅れ、生産性の低い企業が居座った結果、賃金の上昇や人材の流動性を阻んできた。
- 「防衛的賃上げ」は限界に達した。企業が賃上げで人をつなぎ止めようとしても、働く側がより良い条件を求めて転職するのは当然のことだ。人手不足はむしろ労働市場の健全化の証拠である。
- 経済は生き物であり、企業は生まれては死に、死んでは生まれる。倒産は社会的な損失ではなく、新陳代謝そのものだ。むしろこの動きを恐れて「延命策」に走る方が、経済の死を早める。
「倒産が増えた」と騒ぐ報道は、戦後日本の「倒産=悪」という神話に囚われている。だが、今起きているのは危機ではなく正常化だ。人手不足は企業淘汰を促し、労働者はより良い職場に移動する。これこそが、本来の資本主義のダイナミズムである。
まさかこんな時代に戻りたいという人はいないと思うが・・・