ソフトバンクGの連結純利益2.9兆円と景気の明暗

注目されていたソフトバンクGの第2四半期の決算が発表され、四半期決算としてはとんでも額とも言える連結純利益(国際会計基準)2.9兆円となりました。事前から相当よいだろうと見込まれていましたがふたを開けてみればここまで伸びたか、という感じです。この決算を受けて北米市場で同社株(OTC市場)は寄付きで大きく上げた後、ダレてしまいました。今日はアメリカ、カナダ共に第一次大戦終戦がらみの半祝日なので市場はやっていますが、参加者が少なく同社株も出来高が乏しい状況なのでしょうがないでしょう。ただ、同社株はこのところ調整していたところですが、目先よりも中期的な評価に期待をしています。

孫正義氏とトランプ大統領

サプライズは保有していたエヌビディア株、約9000億円相当を売却したことでしょうか?同社は今月下旬に四半期決算発表を控えていますが、過去数四半期の決算発表では失望はしないものの、もの凄いという感じもせず、更に突き抜ける感じがしなかったので同社の現在価値がピークだと見た可能性があります。一方、オープンAIへの追加投資をすることが決まっていますので取捨選択をしているように見えます。

ソフトバンクGは時価総額は日本ではトヨタに次いで第2位で個人的にはトップ奪取に向けて射程距離にあるとみています。AI投資については様々な意見があり確かに高すぎる感はありますが、バブルがはじけるにはまだ早いとみています。それでもAI関連株が総花的に買われるのではなく、銘柄選びが重要になってくるとみています。その中でソフトバンクG社は長く上手に種まきをしており、それらが時間差を経て育ってきているので仮に孫正義氏の野望通りになれば日本企業としては時価総額No1のポジションになれる絶好の位置につけているとみています。言い過ぎかもしれませんが、孫正義氏の半生において今までは花が咲いたり枯れたりして賛否両論の評価だったと思いますが、彼が着実に進めてきたファウンデーションはようやく固まりつつあり、巨大な先端技術への投資企業として世界を圧倒する規模になるとみています。

さて、このような景気の良い話と真逆だったのが火曜日の日経夕刊トップ記事。「飲食店の倒産最多 牛肉・コメ高騰響く 1~10月、焼肉店はや前年超え」と見出しを飾っています。ネット記事ではなく、紙面の場合、新聞社や編集者の意図が出やすいわけでその日のトップはこれで行くぞー!というのは一種の感性でもある訳です。高市内閣が発足し、様々な実務が展開しつつある中でこのネガティブ記事を持ってくる意図は何故なのか、単に嫌味なのか、それともそんな景気が良い話ばかりではないという警鐘なのか、考えさせられます。

ただ、飲食店の倒産や自主廃業の増加についてはコロナの頃から私も含め指摘してきたことであり、特にコロナ終了後に客足が戻ってきた半面、物価高に直面し、更に従業員が確保できないという問題を抱えていました。つまり社会の変化に対して多くの個人経営の店は変化対応ができなくなったということです。これは昨日のブログにも書いた通りです。

特にコロナ禍の際、飲食店の生き残りの方法に焼肉屋への業転が流行りました。自分で焼いてもらうことでスタッフは少なめ、テーブルごとに換気扇がついているから空気の入れ替えもしやすいという理由で居酒屋が焼肉店になったり、おひとり様焼肉がブレークしたりしました。

私は焼肉屋ってそんなに需要があるのかな、と思うのです。いくら日本人が焼肉好きとはいえ、家で全然できるだろうと。焼き肉用の専用の鉄板を買ってくれば味はかなり行けます。違いは火力と換気、あと食べた後の掃除でしょうかね。誰が掃除をやるのよ、という点ではご家庭の主婦はアンチ焼肉派かもしれません。私がビジネスの観点で見ると日本の焼肉屋のメニューには焼肉しかないんです。当地の韓国の店に行くと焼肉はメニューのごく一部を占める感じで客の半分ぐらいは鍋料理を食しています。私はどちらかといえば酒のつまみになるようなものを2-3品という感じ。つまり客の好みに合わせてバリエーションがあるという感じで焼肉オンリーでやっている店はほとんどないと思います。

さて景気の明暗、もう一つ重要なのは自動車産業。数年前、国内自動車販売が500万台を切ったと大きく報じられていましたが、その後、一進一退が続く中で24年は442万台とついに450万台すら下回ってしまいました。人口減のみならず、高齢化で「車はもう運転できない」という人が増えているのが理由。また若い人は経済的理由とか駐車場の問題があり20代の自動車保有率は55%にとどまります。ちなみにその前提となる20代の運転免許所有率もこの20年で10数パーセントポイント減の79%となっています。

その中で開催されたモビリティショー。個人的注目というか驚きは豊田章男会長の熱意が伝わったセンチェリーのブランド化。新型のセンチェリーを見て「あぁ、これは日本のベントレーを目指すのかな」と思いました。もちろん欲しいという気持ちです。こちらではベントレーは自分で運転してもなじむのですが、ロールスロイスは重々しすぎてオーナードライバーのクルマとはいいがたいところです。私の管理する駐車場にもロールスロイスがあり、オーナードライバーも知っていますが、正直、車とオーナーが不釣り合いになり、絵にならないのです。ですが、今回のセンチェリーはオーナードライバーで行けると思います。

併せて、EV戦国時代が始まる気配を感じました。もちろん、BYDの日本独自仕様の軽自動車のEVの参入に対して国内各社が応戦するという感じで軽自動車市場からEVの普及が大きく進む気配を感じています。個人的にはそれに自動運転や運転支援機能をつけ、高齢者が安全安心な移動手段を確保できるようにすることが自動車産業に求められた使命だと思います。地味な仕事かもしれませんが、これにより日本の生活のデファクトスタンダードを変えるはずで、業界の思いっきりの良さを見せてもらいたいところであります。

景気の明暗は業種によってかなりはっきり出てくると思います。消費する側も景気が良い人は加速度的によくなっている半面、悪い人はさっぱり浮上できない状況にあります。政府はこのあたりをつぶさに分析しながら経済政策については攻める分野ばかりではなく、フォローが必要な業種をどう立て直すかという点にも注力すべきではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年11月12日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。