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11月12日、毎日放送「よんチャンTV」で、高市内閣の閣僚給与カット問題について専門家コメント出演しました。同じく出演した元朝日新聞デスク・鮫島浩氏、元厚生労働省官僚・石川和男氏とともに、それぞれ異なる視点から意見を述べています。複数の見方を同時に提示する報道姿勢として、興味深い内容に仕上がったと思います。
YouTubeでも配信されていますので、ご関心のある方はご覧ください。
日本の議員は世界で最も優遇されている
日本の議員年間収入は3000万~4000万円で、先進国の中で最高水準にあります。単に給与が高いだけが問題ではありません。むしろ、問題の本質は「非課税で使途報告不要な手当が年に数千万円存在することです。これは先進民主主義国家の中で日本だけに存在する特異な仕組みといえます。
具体的には、以下のような非課税手当があります。
「調査研究広報滞在費」(旧文通費)は月100万円(年1200万円)で、領収書や使途報告義務がありません。余った分の返金義務もありません。現在は1万円以上のものに公開義務がありますが、返還している人はわずかです。
「立法事務費」は月65万円(年780万円)で、やはり領収書・使途報告義務なしの非課税です。さらに、議員は全国JR乗り放題、新幹線グリーン車も無料という移動特権を享受しています。選挙区と東京を往復する航空チケット(ファーストクラス)を月最大4往復無料で利用できるのです。
公設秘書3人の人件費年約2500万円も国費負担であり、赤坂や永田町の議員宿舎は相場の2割程度という破格の優遇措置が続いています。令和4年度の衆参両院合計の議員特権コストは約301億円。議員1人当たり約4200万円/年です。
国民負担と議員特権の乖離
最も問題なのは、この構造的な不透明性が「国民への負担増加」と直結していることです。政府は国民に消費税引き上げや社会保障費削減を迫りながら、議員自身の襟を正そうとしません。これほどの矛盾があるでしょうか。
国会法第35条により、国会議員の歳費(給与)は一般職の国家公務員の最高給与額(地域手当等を除く)を下回ってはいけないと定められています。つまり、国家公務員の最高給与額(通常は事務次官)との連動制になっているのです。
国会議員の報酬を決定する国会法は1947年に成立した基本法です。その後、議事規則や議員定数に関する改正は複数行われてきました。しかし、議員報酬に関する改正は一度もされていません。誰もが及び腰なのです。
専門家の指摘は一貫しています。透明性のない手当制度や、領収書提出義務のない経費制度は、民主主義の根幹を揺るがすものです。
議員特権削減だけで数十億円の捻出が可能です。国民に増税を求める前に、政治家自身がこの構造的な不公正に向き合わなければ、民主主義への信頼は回復しません。どのように受け止めるかは、政治家の良心にかかっています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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