忘年会に参加したい20代が急増した理由

黒坂岳央です。

Job総研が実施した2025年忘年化の調査によると、忘年会に参加したい20代が急増していることが明らかになった。

と聞くと「そんなバカな!最近の若者は飲み会嫌いで、プライベート重視でしょう」と反発したくなるだろう。筆者もデータを見た時は「本当?」と思ってしまった。だが、これはデータを見る限り、現実に起きていることだ。

忘年会に参加意欲があるのは全体で60.1%であった。年代別の参加意欲は以下の通りである。

  • 20代:71.0%
  • 30代:57.8%
  • 40代:55.1%
  • 50代:48.3%

「忘年会は上司の説教の場」と敬遠されがちだった20代が、最も積極的に参加を望んでいるという事実は、従来の常識を根底から覆す。

一体何が理由なのか? 考察したい。

maroke/iStock

理由はコロナ禍の反動か?

最初に結論からいうと、この理由はコロナの自粛世代の反動と思われる。

当然、これだけだと「コロナ禍の反動だけとは思えない」「コロナありきの解釈?サンプルが偏っている?」という疑問は当然湧くであろう。それは筆者がまず考えたことだ。

だが、複数の調査機関によるデータや経年推移を重ね合わせても、この傾向に疑いの余地はない。

まずはデータ信頼性を検証する。この調査は、20~50代の就業中の男女421人を対象としたものであり、ものすごく多いとは言えないが、あくまで傾向を掴むためのサンプル数として十分な客観性を持っている。

また、同傾向は他の調査機関からも報告されており、例えば、2025年10月に行われた別の調査(くるめし弁当調査)でも全体で77%が「参加したい」と回答するなど、20代の忘年会への意欲自体が全体的に高まっていることは確かである。

また、この変化は一時的なものではない。同調査の経年推移は以下の通りである。

  • 2023年:全体約52%、20代約62%(コロナ制限がほぼ解除された年)
  • 2024年:全体54.1%、20代約68%(回復傾向)
  • 2025年:全体60.1%、20代71.0%(3年連続で20代が最高)

このように多面的に見て、2025年の20代は忘年会を望む割合が多いという仮説を立てることができる。この世代特有の背景といえばコロナ禍自粛ではないだろうか?

もちろん、その他にも複合的な要素はあるかもしれないが、あくまで「主要因」を一つの仮説として導き出したものである。

なぜ今年の20代は忘年会に参加したいのか?

若者が忘年会に参加したいと考える理由(複数回答)の第1位は、「メンバーとの関係構築」(47.0%)であった。次いで「仕事以外の話をしたい」「飲みの席だけの話を聞きたい」が続く。

ここに、今回の逆転現象の核心が隠されている。

今の20代の多くは、2020年から2022年というコロナ禍の最中に新卒入社した世代である。彼らは、リモートワークが常態化し、オフィスでの雑談、ランチ、そして飲み会といった非公式なコミュニケーションの機会を極端に奪われてきた。

彼らにとって、職場の人間関係は「機能不全」に陥りかねないほど希薄な状態にある。チャットやオンライン会議だけでは伝わらない個人のキャラクターや本音、信頼関係を築く機会が圧倒的に不足しているのだ。

すなわち、彼らが求めているのは、昔ながらの「強制的な飲みニケーション」ではない。彼らの参加意欲は、仕事を進める上で不可欠な「人間関係」を取り戻したいという、切実な「渇望」の裏返しだ。

飲み会は「罰ゲーム」から、関係性を深めるための「手段」という解釈なのである。

忘年会に行きたくないのは若者よりオジサン

一方で、若者とは対照的な動きを見せているのが、管理職層である40代・50代である。彼らの参加意欲は全世代で最も低く、消極的な姿勢が目立つ。その背景にあるのは、皮肉にも「ハラスメントリスクへの警戒」である。

かつて「飲みニケーション」を重視していたはずの上司世代は、パワハラ・アルハラに対する社会の目が厳しくなったことで、「自分の発言や行動がリスクになりかねない」という恐怖を抱いている。結果として、部下との交流機会を積極的に避け、消極的になっているのだ。

ここに、現代の職場の深刻なコミュニケーションギャップが生じている。

  • 若手(部下): 仕事のしやすさのために「関係を築きたい」
  • 上司(管理者): リスク回避のために「関係を深めたくない」

上司の「リスク回避行動」が、部下の「関係構築の渇望」を満たす機会を奪っているという、なんとも皮肉な状況が生まれているのである。

20代が最も参加意欲が高いという事実は、現代の若手社員が、人間関係を重視していないどころか、むしろ健全なコミュニケーション機会を強く求めていることの証左である。20代の中でも世代の違いで感覚は異なる一例だろう。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。