高市政権と日本維新の会は「衆院定数を1割減らす」ことで合意し、5日に共同で定数削減法案を提出する方針を示した。しかし、制度面の問題はほとんど手つかずで残っているうえ、反対派の主張からは既得権益を守ろうとする姿勢も透けて見える。議論そのものが、制度改革よりも政党同士の思惑に振り回されているのが実情だ。
- 高市首相と吉村代表は、1年以内に与野党協議会で具体案をまとめる方針で一致し、期限内に結論が出なければ小選挙区25・比例20の計45議席を自動削減することを確認した。
- 法案では「1割削減の目標」だけを掲げ、細かな区割りや制度設計は協議会に委ねられている。
- 自民党は加藤勝信氏に法案対応を一任したが、党内には「自動削減は乱暴」「議論が足りない」との不満が根強い。それでも維新との関係を優先し、承認に踏み切った。
- 一票の格差はむしろ悪化する懸念がある。東京は1議席あたり約52万人、鳥取は55万人で2議席という歪みがさらに広がり、都市部の区割りは細切れになりかねない。
- 参院は都道府県単位・半数改選で定数削減が困難なため、衆院だけ削っても制度全体の格差是正にはつながらない。
- 定数減によるコスト削減効果は小さく、実質的な改善には乏しい。本来必要なのは人口に比例した代表性の確保や選挙制度の抜本的な見直しである。
- 定数削減反対派の論拠には説得力を欠くものが多く、既得権益を守る姿勢が目立つ。本気で反対するなら「議員定数減反対」「議員定数増」を公約に掲げて選挙で訴えるべきだという批判も強まっている。
今回の1割削減法案は政治的パフォーマンスとしてはわかりやすいが、一票の格差や代表性といった根本問題を解決するものではない。削減反対派の主張も制度論に基づく真剣な議論とは言い難く、問題の本質は置き去りにされている。必要なのは削減の是非ではなく、人口構造に合わせた選挙制度全体の再設計である。
2025年10月 連立に合意した自民・維新 吉村・藤田両代表と高市総裁 維新の会SNSより