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「老後の資金が心配だから」と言っても馬耳東風。趣味にお金を注ぎ込む夫——。
この相談、何度見たことか。男女逆パターンもあるけど、圧倒的に「浪費する夫×堅実な妻」が多い。なぜだろう。いや、なんとなくわかる気もする。
「わかってもらえない妻 かまってもらえない夫 なぜ夫婦はすれ違うのか」(須藤夫婦 著)実業之日本社
金銭感覚って、ほぼ親から受け継いだものだ。「お金は慎重に使え」と育った人と、「稼いだら使っていい」と育った人。どっちが正しいとかじゃない。刷り込みなのだ。だから話が噛み合わない。「信じられない」「理解できない」となる。当然だ。
もう一つ、厄介なことがある。
夫婦の片方が「自分ばかり我慢している」と感じている場合、お金が「武器」になることがある。趣味に散財する夫は、もしかしたらしっかり者の妻への「仕返し」かもしれない。無意識の抵抗。俺だって自由にさせろ、と。
……いや、本人に聞いたわけじゃないけど。
で、どうするか。
正論を言えば「話し合いましょう」「家計簿を見せ合いましょう」となる。それはそうだ。貯金額、支出、収入、老後に必要な金額。全部テーブルに出して、「この範囲なら自由に使っていい」とルールを決める。ゲーム感覚でやれれば理想的。2、3ヶ月試して、ダメなら修正すればいい。完璧な計画なんて最初から無理なんだから。
ただ、その前に一つだけ。
夫の趣味の現場に、一度行ってみたらどうだろう。釣りでもゴルフでもカメラでも。「こんなにお金かかるの?」と呆れるかもしれないが、「こういう世界があるのか」と発見があるかもしれない。一緒にやっている仲間を見れば、「ああ、居場所があるんだな」と安心することもある。少なくとも、「無駄遣い!」と頭ごなしに言うよりは、話が進む。
時間とお金は夫婦の共有財産。
——なんて、きれいにまとめてみたけど。結局、夫婦って他人だからね。わかり合えないのが前提で、それでもなんとかやっていく。正解なんてない。あるのは「今日よりマシな明日」を目指す試行錯誤だけだ。たぶん。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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22冊目の本を出版しました。
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