東京・渋谷区が繁華街のポイ捨て対策として、コンビニや自販機の設置者にゴミ箱の設置を義務付ける方針を示した。区は設置しない場合に5万円以下の罰則、ポイ捨てした個人には2000円の過料を科す方向で調整している。しかし公共ゴミ箱が全国的に極端に少ない現状があり、行政の責任や制度設計を巡って議論が高まっている。
- 渋谷区は繁華街で深刻化するポイ捨てを受け、コンビニや自販機設置者に屋外ゴミ箱の設置を義務化する条例改正を準備している。設置しない場合は5万円以下の罰則を科す方針。
- 一方で、ポイ捨てそのものにも2000円の過料を科す予定で、区は「事業者と利用者双方に責任を求める」と説明している。
- しかし日本の街中に公共ゴミ箱が極端に少ないことが、ポイ捨て増加の根本要因と指摘されている。1995年の地下鉄サリン事件以降、テロ対策を理由に公共ゴミ箱は撤去され続け、行き場を失ったゴミがコンビニや自販機の回収ボックスに集中するという地獄絵図が出現した。
- コンビニ側には、店で購入していないテイクアウト容器や家庭ゴミまで大量に持ち込まれる実態があり、ゴミ箱の撤去や管理負担増をめぐるトラブルが続いている。
- 今回の渋谷区の措置に対しては「行政が自ら公共ゴミ箱を設置しないまま、民間に負担を押しつけている」との批判が出ている。
- こうした構造的問題が未解決のまま、渋谷区が民間事業者だけに義務と罰則を課す手法は妥当なのか、政策の優先順位を巡って議論が広がっている。
- 自治体がゴミ箱を設置しても回収できないという背景もある。委託するごみ収集業務では、見積額を上げても人員確保が困難となり、新規契約を断られるケースがあるという。
渋谷区の新たなポイ捨て対策は、街中の清潔維持という目的を掲げつつも、日本全体で公共ゴミ箱を撤去してきた歴史や、自治体の清掃労働力不足といった根本問題に踏み込んでいない。民間に負担を強いる前に行政が何を整備すべきか、都市政策としての筋道が問われる局面に来ていると言える。
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