政府・与党は12日、市販薬と成分・効能が似た「OTC類似薬」を公的医療保険から除外する改革を事実上先送りした。維新が主張してきた「原則保険適用外」を断念し、追加負担を求めるだけの妥協案に後退したことで、OTC類似薬改革は大きくトーンダウンした。与党入りした維新の影響力は限定的となり、「簡単な改革すら実現できない」との評価が広がりつつある。
- 政府・与党は、OTC類似薬の保険適用除外を見送り、保険給付を維持したまま患者負担を上乗せする方向で調整している。
- 日本維新の会は、これまで求めてきた「原則保険適用外」を断念し、「特別料金」として自己負担を増やす新制度を提言した。
- 12日、斎藤アレックス政調会長らが官邸で木原官房長官に提言を申し入れた。急激な患者負担増を理由に、除外案を取り下げたという。
- 特別料金の対象は、市販薬で対応できる症状の薬を基本とし、市販薬と同一成分の薬は少なくとも含める方針だ。
- 政府は年内に結論を出し、来年の通常国会で法案提出、来年度中の制度開始を目指す。
- 日経新聞の医師調査では、OTC類似薬の保険除外に病院勤務医の69%、開業医でも36%が賛成している。
- 「薬局で買うより安いから受診する」という行動が問題視されており、医療の非効率が指摘されている。
- OTC類似薬の保険除外による削減効果は約5000億円とされるが、社会保障費140兆円全体から見れば第一歩にすぎない。
- 医師会や公明党の反発は強く、湿布薬のような低価値医療すら保険から外せなかった。
- 維新は与党内で主導権を握れず、改革は事実上骨抜きとなったとの見方が出ている。
OTC類似薬改革は、保険財政の無駄を削減する象徴的テーマだったが、与党内調整の結果、大幅に後退した。維新は保険適用除外を事実上棚上げし、追加負担という妥協案に後退したことで、存在感を示すどころか与党内の影響力の小ささを露呈した。湿布ですら外せない政治の現実は、社会保障改革の難しさを改めて浮き彫りにした。今回の先送りは、140兆円の社会保障費に切り込む機会をまた一つ逃したことを意味する。
令和8年度診療報酬改定に関する要望書を木原稔官房長官に手渡す日本維新の会・斎藤アレックス政調会長 同政調会長インスタグラムより