東京都が女性活躍の名の下に進める条例案が、事業者の負担や税金の使い道、さらには行政が個人の意識にまで踏み込む是非をめぐり、都民の間で議論を呼んでいる。とくに「男性管理職への生理痛体験」という施策が、象徴的な論点となっている。
- 東京都議会は15日、事業者に女性特有の健康課題への配慮を求める「女性活躍推進条例案」を、都民ファーストの会や自民党などの賛成多数で可決し、17日の本会議で採決された。
- 条例案は、雇用・就業分野での女性活躍を目的としながら、事業者の取り組み事例として、男性管理職に生理痛を疑似体験させる研修の実施を想定している点が大きな波紋を広げている。
- 生理痛体験は、電気刺激によって下腹部に痛みを与える専用機器を用いる方式で、女性の苦痛を理解させることが狙いとされるが、こうした機器の多くが中国製であることも新たな論点として注目されている。
- 企業が体験機器を導入した場合、東京都の補助金が使われる可能性があるとされ、「中国製の体験マシーンに公金が投入されるのか」「税金の使い道として妥当なのか」と疑問の声が上がっている。
- 女性からは、生理痛には個人差が極めて大きく、疑似体験によって理解した気になること自体が問題だとする意見が多く、痛みの再現が女性活躍につながる理屈が見えないとの批判もある。
- 条例案には「性別による無意識の思い込みの解消」への協力を都民の責務とする規定も盛り込まれており、行政が考え方や意識といった内面にまで介入する構造への懸念が指摘されている。
- 国の女性活躍推進法が制度や行動の改善を対象としているのに対し、東京都の条例は何が不適切な思い込みなのかという基準を明確に示さないまま、是正を求めている点も問題視されている。
東京都の女性活躍推進条例案は、働く環境の整備という本来の目的を超え、痛みの体験や意識改革を行政が主導する是非、さらには中国製機器への公金投入の問題まで抱え込む形となっている。制度改善と個人の内面への介入の線引きをどう考えるのか、都民にとっても決して他人事ではない課題となっている。
東京都松本明子副知事会見より