政府は2026年度の診療報酬改定で本体を大幅に引き上げるだけでなく、インフレが想定を上回れば27年度に追加で上乗せする方針を固めた。医療機関の経営を守る狙いだが、財源や現役世代の負担を巡る懸念も強まっている。
- 政府は、2026年度の診療報酬改定後にインフレや賃上げが想定以上に進んだ場合、2027年度に診療報酬をさらに上乗せする仕組みを設ける方針とした。
- 上野賢一郎厚生労働相と片山さつき財務相が行う閣僚折衝の合意文書に、インフレ加速時の上乗せ調整を明記することになっている。
- 2026年度の診療報酬本体は3.09%引き上げる方針で、1996年度以来30年ぶりの高水準となった。
- 政府はインフレ率を2%程度と想定しているが、2026年末時点で物価や賃金の上昇が想定を超えると判断すれば、内閣府の経済見通しなどを基に追加引き上げを検討する。
- 前回2024年度改定では本体を0.88%引き上げたが、当時は物価対応分を盛り込まず、結果として賃上げやインフレが想定を上回った。
- 不足分は2025年度補正予算で、インフレ対応補助金3805億円、賃上げ支援1536億円を計上して対応してきた経緯がある。
- 財務省はこれら補助金を改定率から差し引くよう求めていたが、最終的に賃上げ分は診療報酬改定とは切り離すことで決着した。
- 一方、薬価はマイナス0.8%台となる見通しで、本体と合わせた全体の改定率は2%超となる公算が大きい。
- 診療報酬を2%引き上げれば、保険料負担はおよそ5000億円増えるとされ、負担の多くは現役世代に及ぶ。
- 高齢者の自己負担見直しは先送りされたままで、医療費の9割近くを公費と保険料で賄う構造は維持される見通しだ。
- 与党内では、診療報酬改定を前に医師団体に近い議員が気勢を上げる場面もあり、圧力団体への配慮が改革を鈍らせているとの批判が出ている。
- ガソリン減税や年収178万円の壁見直し、給食費無償化、防衛費増額など財政拡張策が相次ぐ中、診療報酬の大幅引き上げも財政不安要因の一つと受け止められている。
診療報酬の引き上げとインフレ対応を柔軟に行う姿勢は医療機関の経営安定につながる一方、財源は保険料として現役世代に重くのしかかる。高齢者の自己負担を見直さないまま報酬だけを積み上げる政策は、公平性と財政規律の両面で課題を残している。
日本医師会HPより