2025年のコメ市場は、価格高騰とその反動による需要低迷、さらに国の備蓄米政策の転換が重なり、深刻な在庫過剰局面に入っている。民間在庫の急増と輸入米の拡大が同時に進み、需給と価格の先行きに不透明感が強まっている。
鈴木憲和農林水産相が提唱したコメ価格高騰対策の「おこめ券」は、事務負担の重さやJA全農への利益誘導との批判から、全国の自治体で配布見送りが相次いでいる中で、。
- 農林水産省は23日、11月末時点のコメの民間在庫が329万トンと、前年同月比で70万トン(27%)増加したと発表した。
- 11月末としては3年ぶりの高水準で、在庫増加幅は比較可能な2008年以降で最大となった。
- 店頭価格は5キロ4300円前後と高止まりしており、消費者の買い控えで販売は鈍化している。
- 卸売・流通市場ではコメがだぶつき、価格は今後下がるとの先安観が一段と強まっている。
- 2025年は価格高騰を受け、卸業者が外国産米を含めた調達を進めたが、その後の備蓄米放出で需給が一転し、売れ残りが発生した。
- 岐阜県の大手米卸などでは在庫量が前年より2~3割増え、倉庫にコメが天井近くまで積み上がる状況となっている。
参照:コメが倉庫の天井近くまで山積みに… 「コメが余って売れない」 「年明け以降は価格下がる」 国の政策に振り回されたコメ業界 TBS NEWS DIG
- 卸売価格は、60キロ当たり3万4500円から秋以降に急落し、現在は2万円台後半まで下落している。
- 政府が当初、備蓄米を放出しない方針を示していた段階で輸入された台湾米も、政策転換の影響で売れ残っている。
- 一方、民間によるコメ輸入は急増し、1~11月の輸入量は9万2968トンと前年同期の104倍に達した。
- 国産米高騰で関税を払っても採算が取れる水準となり、輸入米需要が拡大している。
- 価格維持を優先し、生産調整を続けてきた日本の農政が、結果として輸入米の人気を高める皮肉な構図が浮き彫りになっている。
コメ市場は、在庫の急増と輸入米拡大という二重の圧力に直面している。消費者にとっては価格低下が期待される一方、生産者や卸売業者にとっては採算悪化が深刻で、倒産懸念も出ている。業界からは、価格維持偏重ではなく、安定供給と持続可能な需給を両立させる農政への転換を求める声が強まっている。
予算委員会での鈴木憲和農水大臣 同大臣Xより