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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか?資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。
資格にとらわれないために自分の棚卸しをしよう
資格の取得には大きな労力が必要ですから、ついついアイデンティティを資格そのものに求めてしまいがちです。そうならないために、まずは自分自身の棚卸しをしましょう。なぜ、この棚卸しが必要かというと、「資格にとらわれず、自分自身のやりたいことを見つける」必要があるからです。
これから資格を取ろうと考えている人が、深く考えずに資格の選択からしてしまうと、その資格にとらわれてしまうことが多々あります。そこで、資格選択の前に自分自身について深く知っておきましょう。
次のワークをやってみてください。非常に簡単なワークですが、あなた自身の方向性を見いだすためにとても重要なワークになります。
(1)自分自身のストーリーを書き出そう
自分の人生の中で、強く印象に残っているものは、自分の方向性を見つけるきっかけになります。たとえば、私が資格関係のコンサルタント業を始めたのは、過去の自分が「資格によって救われた」ことを人生ストーリーから見つけることができたからです。
そのほか、自分自身が困った経験や成功した経験を思い返すといいでしょう。たとえば、過去、ある人にいただいたアドバイスがきっかけで、人生を前向きに考えることができたという出来事があれば、コミュニケーションを仕事にすることがひとつの選択肢になります。
(2)自分自身のスキルを書き出そう
あなた自身のスキル、キャリアを全部書き出してください。あなたの得意な分野が見つかります。これから取ろうとする資格だけでなく、過去のキャリアから自分自身がやってきたことを書き出します。これは今後の戦略に使いますので、過小評価することなく、自分自身を客観的に見てください。
ちなみに、私自身の主なスキルは、「法律」「手続き」「話すこと」「書くこと」「企画立案」「戦略構築」などです。コンサルタント業は、この中の「話すこと」と「書くこと」、「戦略構築」などから現在の活動につながっています。
これが「行政書士」しか念頭になければ、当然「法律」と「手続き」でしかものごとを考えなくなります。ですから、資格から離れることが重要なのです。
自分が本当にしたいことを「資格抜き」で考えよう
自分自身の棚卸しをしたあとで、今度は具体的に「やりたいこと」を見つけます。ここでは、「やりたいこと」「できること」「やれないこと」「やりたくないこと」の4分類で考えていきます。
自分自身の人生戦略をつくるのですから、「やりたくないこと」「やれないこと」ばかりを選んでも不幸です。これは、自分自身がやりたいと思う方向性を見つけるためのワークになります。
(1)あなたがやりたいことを「資格抜き」で書いてください
(2)あなたができることを「資格抜き」で書いてください
(3)あなたがやりたくないことを書いてください
(4)あなたがどうしてもできないことを書いてください
ここまで書くことができたら、少なくとも「分野」と「向かうべき方向性」が見えるはずです。「法律」の分野で個人相手に仕事がしたい。「人と話すこと(コミュニケーション)」の分野で、個人相手に話すような仕事がしたい……。現状では、必ずしもできなくてもかまいません。あなたが本来やりたいことの「分野」が見つかることが重要なのです。
せっかく資格を取得しても、自分が本来進みたかった分野と違っていたら、試験勉強のモチベーションも続きませんし、また仕事を精力的にこなすこともできないでしょう。
たとえば私がやりたいことは、「企画、話すこと、書くこと、出版、組織での仕事、スタッフ教育、新規ビジネス、コンサルティング、相手のモチベーションアップ」などです。そして、できることが、先ほども挙げた「法律」「手続き」「話すこと」「書くこと」「企画立案」「戦略構築」。
やりたくないことは、「飛びこみ営業、テレアポ」など。できないことは「細かい管理、大きな会社へのアドバイス、昇進する方法を伝える」などです。
やりたくないこと、できないことを挙げるだけでも、本来あなたが進みたい方向がわかるようになりますので、簡単な作業ですが重要なワークになります。
資格が「ステータス資格」か「スキル資格」かを見極める
あなたが選んだ資格が行政書士や社会保険労務士のような「スキル資格」である場合は、どうしても資格そのものが必要になります。スキル資格はその資格がないと活動できないため、資格を取得することが目的になりがちです。
私の場合、行政書士の仕事ありきでスタートしてしまったので、やりたいこととマッチしたのは幸運な偶然でした。しかし、本来は「相続をテーマにした仕事がしたい」などの目的があって、「では、それに必要であるから行政書士を取る」という形であるべきです。
これから資格を取得する人は、本当に必要かどうかを、自分自身のやりたいことと照らし合わせて考えてください。自分自身がやりたいことの中で、「法律的な規制があるから資格を取る必要がある」というのが本来の形です。
これに対し、「ステータス資格」を選択した場合は、資格の取得も重要ですが、「本当の実力」を磨くことも重要ですので、資格取得を目的にすることなく、先を見据えておきましょう。
「ステータス資格」は種類が豊富にあることが多いので、能力アップのための受験と、「信頼」を得るための受験を分けると効果的です。
たとえば、表向きは「ソフトウェア開発技術者」を名乗って、「プロジェクトマネージャー」などの資格も勉強して能力を高めておくというのがひとつの方法になります。
フリーランス戦略を練る
働きながら資格の取得を目指している人は、やりたいことが見つかっても、必ずしもすぐに会社を辞めなければならないわけではありません。会社に勤めながら準備をすることも十分可能です。
一方で、もし、あなたが自分の能力に多少なりとも自信がある場合、すぐにフリーランスで動くことを視野に入れてもかまいません。どこにチャンスが転がっているかわかりませんので、もし活動できる状態であれば、躊躇せずにフリーランスで活動をしてみてください。
具体的には、フリーランス活動用の名刺をつくって、セミナーや異業種交流会などに参加してみることが挙げられます。そこで反応を見ながら、本当に仕事が取れれば、フリーランスとしての成功の第一歩となります。
仮にその活動で仕事がなくてもリスクはありませんので、積極的に動いてみるのがいいでしょう。アクションを起こしてみることで、可能性はより高まっていきます。ただし、会社には就業規則などで副業の規定があることがありますので、その点は十分気をつけて活動してください。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。
X(旧Twitter) : @yokosuka_ai
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年8月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。