都心の住宅価格高騰と金利上昇を背景に、日本の住宅ローン市場は大きな転換点を迎えている。フラット35の融資上限引き上げ、固定金利への回帰、50年ローンやペアローンの拡大が同時に進み、若年世代の住宅取得は長期の賭けになりつつある。
- 住宅金融支援機構は、フラット35の融資限度額を2026年4月から8000万円から1億2000万円に引き上げる。
- 上限額の見直しは約20年ぶりで、都心部の住宅価格高騰への対応が目的。
- 日銀の利上げを背景に、変動金利の上昇リスクを避ける動きが強まり、固定金利型ローンの需要が拡大している。2025年7〜9月のフラット35利用申請は前年同期比で約5割増加。
- 住宅ローン利用者の約4人に1人が返済期間35年超の超長期ローンを選択している。さらに20〜30代を中心に、50年ローンや夫婦で借りるペアローンが急増している。
- 都内では1億円超の物件が珍しくなく、単独ローンでは購入が難しい。
- 金利はやや高めだが、審査は比較的緩やかで、個人事業主や団信に通らない人も利用可能、ペアローン対応で、借入上限は最大2.4億円な上、保証料不要、手数料が低い。
- ただしフラット35を担保とする住宅ローン担保証券では、金利上昇を受けて買い手不足が目立つ。低金利期に発行された債券の含み損が拡大し、売却が難しい状況だという。
- フラット35の金利が証券利回りを下回る逆ざやも発生し、制度拡大が進む一方で、金融市場の歪みも広がっている。
フラット35の融資上限引き上げは住宅購入を後押しする一方、50年ローンやペアローンを前提とした「長く働き続ける人生設計」を若年世代に求める制度でもある。住宅政策の拡充が家計の安心につながるのか、それとも将来リスクを先送りするのかが、今後の大きな論点となる。
MASA Sibata/iStock