「タワマン成金」を羨ましがる必要はない

日本経済新聞電子版によれば、今年住宅情報サイトに掲載された東京23区の築20年以上25年未満の物件の70平方メートル換算価格が1億円を超えたそうです(図表も同紙から)。

数年前にタワマンを購入した人たちは購入物件が値上がりして「タワマン成金」と揶揄されています。買い損ねた人たちからすれば、怨嗟の対象なのかもしれませんが、落ち着いて考えてみましょう。

まず、タワマン成金の人たちは確かに物件価格上昇の恩恵は受けていますが、マイホームとして購入している人は値上がりしたからといって売ることはできません。資産価値が上がったとしてもあくまで含み益に過ぎません。

株や投資信託も売却しないと利益が確定しないのと同じで持っているだけでは価格が上がっても下がっても関係ないのです。

また売却して利益が手元に残ったとして、その資金で新たに別の物件を手に入れようと考えても、新たに購入しようとする不動産の価格も上がっています。

高額のタワマンほど値上がり率が高くなる傾向がありますから、より広い物件を買おうとすればかなりの資金を追加しないと難しそうです。

売却しなくても、含み益を使ってマイホーム担保に借入することは出来るかもしれません。しかし、既に住宅ローンでかなりの負債を抱えていますから、追加借入でリスクを取るのはかなり慎重にした方が良さそうです。

このように考えていくと、マイホームとして購入したタワマンが値上がりしたといっても、日々のキャッシュフローには関係なく直接の経済的なメリットを感じることは無いと思います。

むしろ不動産価値が上昇することによって固定資産税が引き上げられるリスクが出てきます。

もしそうなればキャッシュフローからはマイナスの影響が大きくなってしまいます。つまり日々のお金の流れを考えれば値上がりしない方が良いのです。

これからマイホームを購入しようとしている人から見れば、数年前に購入した人たちは割安に購入した勝ち組に見えるかもしれません。

しかし、上記のように考えればそれほど羨むような成功でも無いことがわかります。

SNSでマウンティングしているタワマン成金を時々見かけますが、購入した人の多くはカツカツの住宅ローンの返済に追われて余裕が無いのが現実です。

「隣の芝生は青い」という諺があります。リアルな生活を知らないタワマン成金と自分を比較してストレスを感じることにはまったく意味がないことに早く気が付きましょう。

CHUNYIP WONG/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。