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編集者という存在は、著者にとって特別だ。
企画を磨き、構成を整え、読みやすく仕上げてくれる。橋渡し役であり、伴走者であり、時に厳しい批評家でもある。正直、編集者なしでは本は書けないと思っていた。
「AIで加速する!出版の教科書」(加納敏彦著)きずな出版
でも、時代が変わった。
AIが、その役割の一部を担えるようになった。アイデア出し、企画の組み立て、文章の整理、タイトル案、PR文。全部やってくれる。もはや”一人の編集者”みたいなものだ。
具体的にどう使うか。
「こんなテーマで本を書きたい」と伝える。それだけでいい。読者ニーズ、差別化ポイント、目次構成、タイトル候補。AIがすぐに考え始める。まるで編集者との企画会議だ。深夜2時に、パジャマのままで。
ただし、万能じゃない。ここが重要。
AIは期待に応えようとしすぎる。「こう答えれば喜ばれるだろう」と先回りして、事実と違うことを言うこともある。だから、おかしいと思ったら遠慮なく指摘する。「それ、本当?」「根拠は?」「さっきと言ってること違うよね?」
まるで部下のマネジメントだ。いや、実際そうなのかもしれない。AIは優秀な部下みたいなもので、指示が曖昧だと成果も曖昧になる。的確な指示と適切なフィードバック。それができれば、期待以上の働きをしてくれる。
で、出版社はもういらないのか。
そうは言ってない。流通力とブランド力。書店展開、取次との交渉、全国プロモーション。これは出版社の武器だ。商業出版は今でも狭き門だし、そこを目指す価値はある。
ただ、それだけが出版じゃない。電子書籍がある。オンデマンドがある。AIを使えば、企画から販促まで一人で回せる。
「ひとり編集部」。大げさに聞こえるかもしれないが、実際にできる時代になった。
出版の扉は、編集者と出会う前から開いている。あとは、あなたが押すかどうかだ。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)