生成AIの急速な普及が、雇用の前提を根底から揺さぶっている。米国では、これまで安定・高収入とされてきたホワイトカラーの職が急速に縮小する一方、建設や修理などの肉体労働の価値が見直され、高収入を得る労働者が増えている。いま起きているのは一時的な景気変動ではなく、働き方そのものの構造転換であり、日本も無縁ではない。
- 米国では建設、配管、電力、輸送などの現場職で深刻な人手不足が続き、賃金が急上昇している。経理職から配管工に転身し、収入が約3倍になった事例も報じられ、肉体労働が新たなアメリカンドリームとして注目されている。
- 背景には生成AIの急速な進展がある。事務、経理、翻訳、校閲、データ処理などのホワイトカラー業務はAIに代替されやすく、実際に米国では高給職を含めて職が消え、失業者が増えている。
- ITや研究分野でも、AIで代替可能な領域は急速に縮小し、分野ごと沈むケースも出ている。タクシーの無人化が進み、かつて急成長したUberも下火になりつつあるとの指摘がある。
- この影響は米国にとどまらず、英国にも波及し、大卒者の就職難が深刻化している。エントリーレベルの職が消え、卒業生が就職できない状況が現実味を帯びている。
- 一方、日本では解雇規制の強さもあり、ホワイトカラーの雇用は表面上維持されているが、米国企業と競争する以上、数年以内に強い賃下げ圧力がかかる可能性が高い。
- ジョブ型を徹底し、不要な職の賃金を下げられる企業は生き残る一方、中高年の賃金を温存し若手の昇給だけを抑える企業は、競争に耐えられないとの見方が出ている。
- 大学無償化など教育拡大策についても、AIに代替されやすい文系ホワイトカラー予備軍を増やすだけで、失業者を量産する恐れがあるとの批判がある。
AIによる雇用喪失の波は海外ではすでに現実であり、肉体労働と頭脳労働の価値は逆転し始めている。大学無償化など従来型の教育拡大策は、AIに代替されやすいホワイトカラー予備軍を増やすだけだとの批判も根強い。
世界でテクノロジーが進化する中、個人が自らの生存戦略を考えざるを得ない時代に入った。日本人がこの変化をどう受け止め、どこに活路を見いだすのかが、今後の成長と社会の安定を左右することになる。