イランで2022年以来の大規模な抗議デモ

深刻な経済危機に直面しているイランで1日、5日連続で大勢の人々が独裁政権に抗議するため街頭に繰り出した。目撃者によると、治安部隊が主要都市に大規模で展開した一方、政府は特に地方部でデモを鎮圧した。

政府の経済・金融政策の失政を認めるペゼシュキアン大統領、イラン大統領府公式サイトから、写真は2025年12月27日のIRNA通信

今回のデモは、28日の為替レートの急落がきっかけとなった。特に首都テヘランでは、商人たちが自発的に街頭に繰り出した。そして抗議デモは大学にも波及し、テヘラン市内の7つの大学でデモが行われた。イランの報道によると、内陸部の都市エスファハーン、ヤズド、そして北西部のサンジャンの大学でも抗議活動が行われた。

聖職者支配体制のムッラー政権は治安部隊を動員し、抗議活動ですでに数人が死亡した。特に地方では、31日の夜からデモ参加者と治安部隊の間で激しい衝突が発生した。人権団体ヘンガウによると、中南部のローデガンでは少なくとも2人のデモ参加者が死亡した。国営通信社FARSも、同市内でデモ参加者と治安部隊の間で激しい衝突が発生し、2人が死亡したと報じた。

抗議デモはまた、ファールス州、チャハル・マハル州、バフティヤーリー州、そしてケルマンシャー州でも、さらに深刻な衝突が発生した。マルヴダシュト市では、群衆がクラクションを鳴らしながら通りに流れ込み、装甲車やオートバイの護衛隊がデモ隊と対峙した。

イランでは2022年9月、22歳のクルド系イラン人のマーサー・アミニさん(Mahsa Amini)がイスラムの教えに基づいて正しくヒジャブを着用していなかったという理由で風紀警察に拘束され、刑務所で尋問を受けた後、意識不明に陥り、同月16日、病院で死去した。このことが報じられると、イラン全土で女性の権利などを要求した抗議デモが広がった。それに対し、治安部隊が動員され、強権でデモ参加者を鎮圧した。その結果、国内外から激しい批判の声が高まった。今回の抗議デモが2022年以来の大規模抗議デモに発展する気配が出てきた。

穏健派のペゼシュキアン大統領は1日、チャハル・マハル州とバフティヤーリー州を訪問した際、政府の経済政策の金融対策の失政を認め、政治的分裂を警告し、国民に対話を呼び掛けている。メフル通信によると、ペゼシュキアン大統領は労働組合の指導者らと会談し、経済危機への対策を提案した。また、内務省に対しは、「抗議活動参加者の正当な要求に耳を傾け、代表者と対話を行うように」と強く求めたという。

同大統領はまた、異例の率直さで、高インフレの責任は政府と銀行にある。彼らは恵まれない人々のポケットマネーを空にし、購買力を弱めている」と述べ、「人々の生活問題を解決しなければ、我々は地獄に落ちる」と述べた。

国営テレビによると、モハンマド・バーゲル・ガリバフ国会議長も「国民の生活に関する懸念と抗議活動には、十分な責任と対話を通じて対処しなければならない」と述べる一方、抗議活動を利用しようとする外国の工作員や政府批判者に対しても警告を発した。

ちなみに、闇市場におけるイラン通貨の価値は、急落している。価格監視ウェブサイトによると、28日には1ドルが約142万イラン・リヤル、1ユーロが170万イラン・リヤルだった。1年前は1ドルが82万イラン・リヤルだった。イラン通貨の慢性的な切り下げは、ハイパーインフレと、価格の急激な変動による深刻な不確実性をもたらしている。

イランは過去、パレスチナ自治区のイスラム過激派テロ組織「ハマス」、レバノンの民間武装組織ヒズボラ、イエメンの反体制派武装組織フーシ派に軍事支援してきた。同時に、シリアのアサド政権に対してもロシアと共に軍事支援してきた。その一方、イスラエル軍の空爆で大ダメージを受けた核関連施設など、核兵器開発のために巨額の資金投入を繰り返してきた。

数十年にわたる西側諸国による制裁によって弱体化したイラン経済は、高インフレの圧力にさらされている。さらに、9月末には政府の核開発計画に関連する国連制裁が復活するなど、イランの国民経済を取り巻く状況は厳しい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年1月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。