明けまして御目出度う御座います。
さて、今日は本題の干支学による今年の年相についてお話しする前に干支学というものが、どういうものかを簡単に述べておきます。
干支学は中国の周代に始まり、戦国から漢代にかけて整ったもので今日まで何千年にも及ぶ中国古代人達の自然の摂理からの学びの集積であり、統計上の確率や蓋然性に基づいて帰納的に生み出されたもので、その歴史的、学問的真義は深く厳粛なものです。我々はこの先人達の貴重な遺産である干支学を活用し、自分や会社、その他の様々な組織体の運命をより良きものとしなければなりません。
それでは本題に入りましょう。
今年の干支は丙午(へいご・ひのえうま)です。
先ず、丙の字形から見ていきましょう。
甲骨文字研究者の釈文は種々多様です。例えば魚尾に象(かたど)るとか、宗教的祭儀に用いる机の形に象るとか、双出(ふたで)の芽が両側にピンと伸びた様を象るとかです。いずれにせよ何かが左右にピンと張り出している形から来ているようです。
次に丙の字義ですが、丙は五行説では火の性格、方角では南、季節では夏です。
『説文解字』(後漢・許慎著)に「丙は南方に位(くらい)し万物成りて炳然(へいぜん)たり。陰気初めて起こり陽気まさに欠けんとす。一の冂(けい)に入るに従う。一なる者は陽なり」とあります。
「万物成りて炳然たり」とは夏に陽気がぐっと伸長して万物が繁茂し、光り輝いているということです。「炳」には、あきらか・輝く・強い・著しい、などの意があります。陽気が盛りの絶頂に達する一方で、陰気が生ずる気運となるのです。
漢書(かんじょ:漢の歴史書)の「律暦志」に丙の字は一と入と冂から成る会意文字で、一は陽気を表し、それが冂(かこい)の中に入り、隠れてしまい、やがて陰気が生ずる気運となる、と説明しています。
このように、丙年は物事が盛んになり、大いに伸長する年なので挑戦することで大きな成長や飛躍が見込まれる希望が持てる年です。ただ有頂天になり油断すれば陰気が生まれ陽気が去ることもあることに留意しなければなりません。また『釈名…しゃくみょう:後漢末の劉熙(りゅうき)が著した辞典』に「丙は炳なり。物生じて炳然皆著明なり」とあるように物事を燃焼発展させるとともに、これまで曖昧だったものを全てあきらかにして行くということです。
さて「午」の方に移りましょう。
先ず、字形ですが、白川静博士の『字統』によると、午の金文(きんぶん:青銅器の表面に刻まれた文字)の形は杵(きね)の象形文字です。
他の学者達も何人かは上下させる「きね」の象形文字だとされているようです。
字義ですが、白川博士は杵は古代では邪悪を祓(はら)う祭儀に道具として用いられたので、「午」には忤(さから)うという意味が生じたと述べておられます。
後漢の「説文」にも「陰気が陽にさからって出(い)ずる意、午は忤うなり」とあり、「さからう・そむく」という意味だとされています。
また陰暦でいうと午は五月にあたり夏至の季節をさしています。日がどんどん長くなり、夏至を迎えた後、短くなっていく、つまり陽が陰に変わる月であり、物事の変化を示しています。
また、「午」の字の構成上、午の上部は地表を表し、下部の十の横一は陽気で、縦1は陰気が下から突き上げて地表に出ようとする説もあります。
陰陽五行説では、丙は「火の陽」、午も「火の陽」であり、このように十干も十二支も同じ性に配された組み合わせは「比和」と呼ばれており、同気が重なるため、五行それぞれの性質を強め、良い場合はますます良く、悪い場合はますます悪くなるとされています。
以上の考察から、今年の年相を私流にまとめると次の様になります。
昨年の乙巳(いつし)は旧体制を打破し、けじめ・けりをつけ新しい創造発展に向かう極めて重要な大変化の年でした。今年の丙午の年も乙巳で始まった大変革を成功裏に進行出来るかどうかを決定づける大事な年です。
岸田・石破両氏を中心とした政権は、親中左翼的でした。そこに保守のエースとして高市総理を中心とした勢力が勃然と登場して政権の座に就き、短期間で次々と健全な改革を始めました。
在来のジャーナリズムはどちらかと言えば、高市政権に対して終始否定的あるいは懐疑的ですが、幸い七〇%以上の国民は現政権を支持しています。丙午の年に相応しい陽気に満ちた機運を盛り上げ、日本の望ましい変革に繋がればと思っています。我々国民も今こそ活眼を開き、台頭してきている国内外の反対勢力の突き上げを抑えることに尽力しなければなりません。
さもないと、来年は丁未(ていび・ひのと)の年ですが、中国の唐や宋の時代の文献では、丙午と丁未の年を「内憂外患の年」として警戒してきました。
次に、過去の丙午の年を遡って象徴的な出来事を拾ってみましょう。
(八四〇年前、一一八六年)
・源平合戦が終結し、源頼朝が武家政権の基盤固めを企図し、朝廷の九条兼実(かねざね)との連携を深め、源義経の最終的処理(奥州合戦)へと向かう転換期。
(四二〇年前、一六〇六年)
・江戸城大規模改修(天下普請…てんかぶしん)が一六〇三年から本格化し、本丸御殿が完成。シャム(タイ)への渡航許可を得て貿易を開始。徳川幕府体制に向けた整備が図られ、対外貿易の萌芽が見られた年。
(一八〇年前、一八四六年)
・この年に即位した孝明天皇は、鎖国継続と攘夷の意向が強く、幕末の安政五ヵ国条約(日米修好通商条約など)の調印・勅許を断固拒否。これが尊王攘夷運動を活発化させ、天皇の政治的発言力が高まるきっかけとなった。
(一二〇年前、一九〇六年)
・鉄道国有法が公布・制定。
・前年に日本は当時最強と言われたロシアのバルチック艦隊を撃破し、世界的勢力としてその存在が認められ、次のステージに向けて始動。
・南満州鉄道が設立される。
・韓国に統監府が設置される。
・サンフランシスコ地震。
(六〇年前、一九六六年)
・一月から海外渡航回数一人一年間一回限りという制限が撤廃される。
この年は異常に航空機事故が多かった。列挙すると①全日空のボーイン727型旅客機が羽田沖で墜落、乗客一三三人全員が死亡。②カナダ太平洋航空のDC8型旅客機が羽田空港着陸寸前に防波堤に激突して乗客六四人全員死亡。③英国海外航空機BOACが富士山付近で墜落、一二四人全員死亡。④全日空の国産航空機YS11型機が松山空港の海上で墜落、五〇人全員死亡。
・新東京国際空港の建設地として成田に決定。反対運動、いわゆる「成田闘争」が始まった。
・「丙午生まれの女性は気性が激しい」という迷信があり、これを信じた人が出産を控えたためこの年の出生数は約一三六万人となり、前年に比し、約二五%減少。にもかかわらず、日本の総人口は一億人を突破。
・六月二九日にザ・ビートルズが来日し、三〇日~七月二日にかけて日本武道館で公演。これを契機に「グループ・サウンズ」が流行語となり、若者文化の新しい波が到来。
・この年は、トヨタの初代「カローラ」、日産の「サニー」が乗用車市場を牽引し、日本の「マイカー元年」となる。日産がプリンス自動車工業を吸収合併。
・年後半から政界の不祥事が相次いで発覚し、「黒い霧解散」と呼ばれた一二月二七日の衆院解散につながった。
最後に、SBIグループはこの丙午の年相を踏まえ、どうあるべきかそしてどうするべきかについて触れておきます。
第一に、SBIグループの事業は天助を得て、今のところ万事快調に推移していますが、丙の字義で見たように盛んな時に必ず衰える兆を含んでいますから、決して有頂天にならないように注意が必要です。「慢心と放縦(ほうしょう)」は事業経営の敵、「正しい見識と勇気」は味方と心得るべし。
第二に、丙には「あきらか」という意味があることも認識しておくべきです。物事が明らかになってくる年です。今まで長い間いい加減にしていた物事がはっきりして、あきらかになってくるのです。そうなると丙に小扁をつけて怲(うれえる)という人が出てくるのです。具体的な事例をあげると米国の司法省が「ジェフリー・エプスタイン文書」の公開を開始しましたが、この関係でも様々あばかれることになるでしょう。また、日本でも総合モーターメーカーのニデックの不適切会計疑惑などもはっきりしてくるでしょう。我々は「隠れたるより見(あらわ)るるは莫(な)く、微(かす)かなるより顕(あきら)かなるは莫し。故に君子はその独(ひと)りを慎(つつ)しむなり。」という『中庸』にある言葉を常に頭に入れておかなければならないのです。
第三に、事業戦略というものは、次の新たな十年の成長に向けた布石を打つといった少し長めのスパンで考える必要がある。例えば、二〇一八年の年頭所感で私は「我々SBIグループはA&B即ちAIとBlockchain(ブロックチェーン)を今後十年間に最も大きな社会変革を起こす技術として位置付けています。こうした分野に傾斜的に資源をつぎこむつもりです。(中略)金融サービス事業分野においては仮想通貨の生態系の構築に全力投球しなければなりません」と述べその通りにやってきました。もっと言えば、米国のリップル・ラボに投資して一〇%程度の株を取得したのは今から十年程前です。言うまでもなく、現在SBIグループの収益の柱の一翼を担っているのは、こうした分野です。新設のSBIネオメディアも必ずそうなっていくと思います。技術と時代の趨勢を見極め、目先のことに振り回されないように、事業判断をしなければなりません。
今後とも今申し上げたように勇気と実行力を持ち、より広範囲な事業分野に、よりグローバルに目を向け拡大し続けなければなりません。またグループ内の既存の各生態系との有機的結合を常に念頭に置き、相互間のシナジー効果を十分に働かせるよう設計していくことが非常に重要です。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2026年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。