米国はまずベネズエラ政権の組織構造の把握から始めた
ベネズエラのマドゥロ大統領をそのポストから外すプランは2020年に誕生していたという。それを画策したのはデルシー・ロドリゲス氏と彼女の兄ホルヘ・ロドリゲス氏(国民議会の議長)の二人であった。この二人は1期目のトランプ大統領と直接接触していた。
その後、バイデン大統領の政権下にあってアレックス・サーブ氏という人物が米国の刑務所から釈放されるという出来事があった。彼はマドゥロ大統領の代理として世界を股にかけて裏交渉で活動していた人物だ。彼はアフリカのカボ・ベルデに滞在していた時に逮捕され米国に送還された。サーブ氏が米国の刑務所に服役中にベネズエラの指導者たちの組織構造を米国政府に伝えた。その見返りとして、彼は釈放されてベネズエラに戻った。その交渉を裏でやっていたのがロドリゲス兄妹であった。
マドゥロ氏がいなくなったあとも政府支持派が支配を続けている
そしてトランプ大統領が再び大統領になると、この兄妹とトランプ氏との関係が復活した。しかも都合の良いことに、国務長官にはラテンアメリカ政治を熟知しているマルコ・ルビオ上院議員が就任した。
デルシー・ロドリゲス氏はこれまでマドゥロ政権下で情報相、外相、議会議長そして副大統領を務めた実力者だ。だから彼女は軍部や政治の決定権をもっている中核組織を熟知している。軍部の中には、本来チャベス氏の後継者とされていたディオスダード・カベーリョ氏とパドリーノ・ロペス氏がいる。二人とも米国から懸賞金を掛けられている人物だ。前者は議会議長や内務相、後者は国防相を務めていた。特に、ディオスダード・カベーリョ氏は軍人の麻薬組織カルテル・デ・ロス・ソレスの実質的なリーダーだとされている。
米国にコカインを密輸しているこの麻薬組織のメンバーたちはマドゥロ大統領が米国に連行されたあとも、この組織活動を止めることはしない。何しろ、多額の利益を得ることができるからだ。
ディオスダト・カベーリョ氏とパトゥリーノ・ロペス氏はマドゥロ氏が米国へ連行された今も、これまで通りの政治体制を維持しようとしている。トランプ政権はこの二人を拘束するか殺害するか、いずれは処分する意向だ。
マリア・コリナ・マチャド氏が大統領になれば殺害される可能性が大
その一方で、マリア・コリーナ・マチャド氏はノーベル平和賞を受賞した今もベネズエラに戻っていない。2024年の大統領選で彼女の代理として立候補し勝利したエドゥムンド・ゴンサレス氏もスペインに滞在したままだ。
彼ら二人は軍部と政府内部との接触はまったくない。現在、ベネズエラ国内ではこれまでの政治体制支持派が武器を所持して反体制派に危害を加えようとしている状況にある。彼らはあたかも市民警察であるかのように振舞い、不審と思われる人物の携帯電話に記録されているアルバムの中に今回の米国の介入を支持している画像があれば拘束されて殺害される可能性もある。だから市民の間で民主化への喜びを表明しないのだ。
このような状況下で、反体制派のリーダーであるマリア・コリーナ・マチャド氏が仮に大統領に成ろうものなら、彼女は軍部によって殺害されると断言する人もいる。しかも彼女の姿勢はこれまでの体制派と真っ向から対立して行く姿勢を崩そうとしない。
しかも、マチャド氏が大統領では原油の採掘へのアクセスは難しく、この採掘に従事している国営会社の幹部らとも接触は全くない。それはトランプ大統領にとっては全くの不都合だ。何しろ、トランプ氏は米国の石油会社がベネズエラに復帰してもらうという強い意向をもっている。チャベス前大統領の政権時に米国の石油会社の多くが国営化されて追放した。
トランプ政権のプランはまず社会の安定化と経済復活を優先
そこでまずベネズエラの社会を安定させ、経済の復活を図り、その後に選挙を実施するというのがトランプ政権の考えだ。だから、マリア・コリナ・マチャド氏が大統領になる道のりはまだまだ遠い。
しかし、ここでひとつ理解する必要があるのは、デルシー・ロドリゲス氏は今回暫定大統領に就任はしたが、トランプ政権の忠実な下僕だということ。マルコ・ルビオ国務長官の指示に絶対服従が要求されているということだ。もし服従しないのであれば、マドゥロ氏と同じ運命を歩むというのは彼女自身それを承知している。なぜなら彼女もマドゥロ政権の重鎮のひとりとして違法行為を行って来ていたのだ。だから本来であれば、逮捕されて米国の刑務所に送られる運命にあるのだ。